旧約聖書の『創世記』37-50ではヨセフを中心としたストーリーで構成されており、このストーリーを『ヨセフ物語』と呼ぶそうです。
このヨセフストーリーはヨセフという男の生涯なのですが、まぁこれが波乱万丈なのです…。
ヨセフ、誕生する
まずはヨセフの誕生からですが、ヨセフは
- 父親:ヤコブ
- 母親:ラケル
を持つ長男として生まれます。
長男といってもラケルの子として長男というだけで、異母兄弟を含めると11男になりますので、ヤコブにとってはかなり遅めの子どもということになります。
父親ヤコブのストーリーも別記事にてありますので、よろしければご覧ください。
ヤコブとは?イスラエルの名前を持つ男の4つのエピソード
旧約聖書の『創世記』の中で神と戦った人間こそがヤコブです。ヤコブとは、「イスラエル」という国名の起源でもあります。そんな超重要人物であるヤコブ(イサクの息子)の一生をストーリー仕立てで解説しています!
歳をとってからの子どもというものはいつの時代も可愛いものらしく、父親のヤコブはこのヨセフをネコ可愛がります。
ヨセフや、この服はお前にこそ似合うと思うぞ
ありがとうございます。お父様
ヤコブは誰よりもヨセフを愛し、煌びやかな服を送ったりもしていました。
もちろん、それを面白く思わない人もいます。
異母兄弟です。
また、ヨセフには不思議な夢を見るという能力がありました。
ある日、ヨセフは夢の話をしました。
夢の中で僕は兄さんたちと一緒に畑で束を束ねていたんだ。そしたら突然、僕の束だけ立ち上がって、兄さんたちの束は僕の束に向かってお辞儀をしだしたんだ。不思議な夢だよね
この夢は将来ヨセフが出世し、兄弟達がヨセフに跪くことを暗示しているのですが、そんなことを言われていい気になる兄弟などいません。
お前調子にのんなよ!
とブチ切れした兄弟たちはヨセフを穴に落としたり、最終的にはヨセフを商隊に売りさばいてしまいます。
父親のヤコブにはヨセフの服に羊の血を付け、獣に襲われてヨセフは死んだことにしてしまいます。
こうしてヨセフは家を無理矢理出ることになり、さらには商隊の手によってエジプトに渡ることになるのです。
ヨセフ、投獄される
商隊と共にエジプトに渡ったヨセフでしたが、エジプト王宮の侍従長であるポティファルの下僕となります。
そこでヨセフは一生懸命働くことになります。
そして、その努力が身を結んだのか、それとも元々地頭が賢かったのか、ヨセフはポティファルから下僕長という立場を与えられました。
そして、その家の全財産を管理する立場にまでなるようになるのです。
そしてそんなヨセフに目をつけた人物が一人。
それがなんとポティファルの妻でした。
ヨセフ、ちょっと私の部屋まで来てくれない?
はい
ヨセフが彼女の部屋に向かうと、そこには半裸姿のポティファルの妻が…。
いけません、奥様。どうか服を来て下さいませ
とポティファルの妻の性的な誘惑にヨセフは全く応じませんでした。
この場面は多くの芸術作品の題材として描かれています。
しかしながら、女性の方からモーションをかけているのに全く相手にされないとなると
相当プライドが傷付いたのではないか?
と思われます。
現にポティファルの妻はブチ切れ、
何よ、あいつ…!あなた、ヨセフに襲われたわ
と嘘の証言をします。
この証言により、ヨセフはエジプトの監獄に投獄されてしまいます。
そんな不憫なヨセフですが、
当時は強姦罪に対しては死刑が一般的であり、この物語においてポティファルはヨセフを死刑にしていないため、妻に対して疑念を持っていたのではないか?
との考えをある博士は示しています。
ヨセフ、夢を解き明かす
ヨセフはポティファルの妻の偽証言により監獄生活が始まるのですが、なんと監獄長に気に入られたヨセフは監獄の管理人になることができます。
父親やポティファル、そしてこの監獄長とヨセフは立場の上の男性に好かれる率が半端ないのです。
そんな監獄の管理人となったヨセフの元に、エジプトのファラオに罪を犯した献酌官長と調理官長がやってきました。
二人は何やら話しています。
昨日、凄く変な夢を見てさぁ
お前も?俺もなんだよな
ヨセフは二人の夢について聞くことにしました。
まず献酌官長の夢についてです。
夢の中で俺の前に1本のぶどうの木があって、その木には3本のつるがあったんだよ。そのつるが芽を出すと、不思議なことにすぐに花が咲き、凄い勢いでぶどうの実すらなったんだ。だから、俺がそのぶどうを摘み、急いでファラオの元に持って行って、ファラオの杯にぶどうを搾って入れて、杯をファラオに渡したんだ
なるほどなるほど。では、あなたは?
ヨセフは調理官長に向き合ってそう言いました。
そして、調理官長は昨夜の夢について語りだしました。
俺の夢はなぜか頭の上に枝網のかごが3つあったんだ。すると、鳥がやってきて、1番上のかごの中に入ってあるファラオのための食事をそいつが食べやがったんだ
ふむ、なるほどです
ヨセフの何か分かったような様子に二人は夢の解き明かしをするように頼みました。
ヨセフはそれに応えます。
まずは献酌官長殿の夢ですが、3本のつるというのは3日後を意味します。3日後、あなたはファラオから元の地位に戻してもらい、以前のようにファラオに杯を渡すことを許されるということを預言しています
本当か!?
ヨセフの言葉に献酌官長は驚きます。
そして次に調理官長殿の夢ですが…。3つのかごというのも3日後を意味しています。3日後、ファラオはあなたを木につるして殺し、あなたの死体に鳥が群がるということを預言しています
な、何!?
これまた調理官長はヨセフの言葉に驚きます。
そして、二人はヨセフの夢の解き明かしの通りの運命を辿ったのです。
ヨセフのこの能力はすぐに噂で広まり、ファラオの耳に入るようになります。
すると、ファラオがヨセフの元へとやってきました。
お前が夢の解き明かしをするというヨセフという男か?
はい
お前に解いてもらいたい夢がある。私の夢だ
ヨセフはファラオの夢に耳を傾けました。
私がナイル川の岸に立っていると、川の向こうから肉づきがよくてつやのある雌牛が7頭上がってきて、葦(よし)の中で草を食べていた。すると、そのあとに弱々しくやせ細って非常に醜い雌牛が7頭上がってきて、肥えた雌牛7頭全て食べてしまった。しかも、醜い牛は肥えた牛を食べたにもかかわらず、その姿は何も変わらなかった。これは一体どういうことだ?
ファラオの夢にヨセフはすぐに進言しました。
7頭というのは7年を意味します。肥えた雌牛というのは豊作、醜い雌牛というのは飢饉のこと。今から7年間は大豊作が訪れ、その後7年間は大飢饉が起こることを意味しています。王様、すぐに対策を取るべきです!
なるほど、私の夢にそのような意味があったとは…。そなたの力は本物のようだな。よし、ヨセフ。そなたにエジプト宰相の地位を与えよう。そして、ツァフェナト・パネアという名も与えよう
ありがとうございます
そして、ヨセフはエジプト宰相として異例の大出世をとげ、7年後の飢饉に備えるための国政にその能力を発揮することになります。
兄弟たちと感動の再会
7年間の大飢饉を襲ったのはエジプトだけではありませんでした。
それはカナンの地にも影響を及ぼしていました。
食物がなくなってきたな…。しょうがない、エジプトまで穀物を買いに行かないと
ヨセフの10人の異母兄弟達は1番下の弟であるベニヤミン(唯一のヨセフの同母弟)をカナンの地に残し、エジプトへ向かいました。
あれは…兄さんたち?
エジプトでの思いがけない異母兄弟との再会にヨセフは驚きます。
しかし、異母兄弟たちはまさかエジプトの宰相であるツァフェナト・パネアがヨセフだとは夢にも思いません。
兄さんたちは僕のこと、気付いていないみたい。よし、それならば少し試してみよう
異母兄弟たちに対して、
お前たちは間者(スパイ)であるな!
とヨセフは決めつけ、
お前たちの1番下の弟(ベニヤミン)をエジプトに連れて来い
と要求します。
分かりました…。ベニヤミンを連れてくるので、それまでの間、私たち兄弟の一人であるシメオンを人質に置いていきます
異母兄弟達はヨセフと約束を交わし、穀物を持ってカナンの地に帰りました。
よく戻ったな、息子たち
父親のヤコブが息子たちを出迎えます。
父さん、実はエジプトの宰相にスパイと勘違いされていて、ベンヤミンを連れていかないといけなくなりました。シメオンは人質になって今、エジプトにいます
なんだそれは!わしは絶対にベンヤミンを連れて行くことは反対じゃぞ!
父親のヤコブはベニヤミンをエジプトに連れて行くことは断固反対していました。
しかし、結局飢饉には勝てず、穀物が尽きてしまったところで異母兄弟たちはベンヤミンを連れて再びエジプトを目指しました。
(べ、ベンヤミン!)
ベンヤミンを見たヨセフはひどく感動し、異母兄弟たちにご馳走をもてなしました。
ヨセフ、兄たちを謀る
その後、兄弟たちがカナンの地に帰ることになりました。
ヨセフはベンヤミンの持つ穀物の袋に、そっと自らが使う銀の杯を差し入れました。
そして、彼らが出発するのを確認するとすぐに
私の銀の杯がなくなった!
と騒ぎます。
きっとあの男達が奪ったに違いない!
と自作自演で兄弟たちを追い詰めます。
お前たち、私の銀の杯を奪ったな!
何を言っているんですか、宰相殿。そんなことしませんよ!
ならば袋を見せてみろ!
ベンヤミンの袋を調べると当然ながら銀の杯が見つかります。
ぼ、僕、知らないよ!
当然、ベンヤミンは盗みなど働いていないのですが、ヨセフは厳しく言いつのります。
ならばなぜお前の袋から銀の杯が出てくるのだ。小賢しい。罰として、お前を私の奴隷にしてやる
そんなヨセフの言葉に兄弟たちは身を投げ出してベンヤミンを守りました。
私たちが彼の代わりに奴隷となります。ですから、どうか彼は帰してあげてください
どうかお願いします。宰相殿!
ヨセフはそんな兄たちの姿に感動しました。
思えば幼少期のヨセフは兄たちに穴に落とされたり、商隊に売り飛ばされたりしていましたから、兄弟で守りあっている姿の感動はひとしおだったことでしょう。
兄さん達…。僕だよ。ヨセフだ
ついにヨセフは自分の身のうちを兄たちに告げます。
ヨセフ…?ヨセフってまさか…!
兄さん達の弟のヨセフだよ
兄たちはヨセフの言葉に驚くも、次々にヨセフに抱きつきました。
ヨセフ!
ヨセフもまた兄たちを抱きしめ返しました。
こうして、長い間兄弟間にあった溝は見事に埋まったのでした。
そして、その後兄たちはヨセフのことを父親であるヤコブにも告げました。
はて、ヨセフはたしか死んだんじゃ…?
とヤコブは長年そう思っていたこともあり、最初は信じませんでした。
しかし、最終的にはヨセフと出会うことができ、劇的な再会を果たすことになるのです。
このヨセフ物語以外にも、旧約聖書の『創世記』に出てくる様々なお話をまとめている記事もありますので、
創世記とは?あらすじや登場人物を分かり易くまとめて解説!
誰もが一度は聞いたことがあるノアの方舟やバベルの塔、そしてアダムとイブの物語。これらは全て『創世記』のお話です。そんな一度は聞いたことのある創世記のストーリーとは?ざっくりとまとめて解説してみました!
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旧約聖書のあらすじを漫画で分かり易くまとめたものがあります。
イラストで旧約聖書をざっと理解したい方は、
こちらの本もぜひ読んでみて下さい。
旧約・新約聖書のあらすじから、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教までを1冊の本でまとめたものがあります。
聖書の基本から発展編まで、さらに深く知りたい方には持って来いの本なので、
気になる方は、こちらの本もぜひ読んでみて下さい。
参考:『ヨセフ (ヤコブの子)』
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