ハンムラビ法典が発布されたのは紀元前のお話。
完全な形で残る法典としては、世界で2番目です。
そんなハンムラビ法典は、「目には目を、歯には歯を」という復讐法の原則に立つ刑法です。
倍返しが怖い…
と言われるほど、ハンムラビ法典は果たして本当に最低な法典だったのでしょうか?
ハンムラビ法典とは?簡単まとめ
当時、バビロニアを統治していたのがハンムラビ王でした。
その後に、メソポタミアに勢力を拡大し、バビロニア帝国の初代王となります。
その王様の名前にちなんで作られた法典こそが、「ハンムラビ法典」なのです。
その中身は以下の3部構成となっています。
- 前書き(ハンムラビの業績)
- 本文
- 後書き(彼の願い)
本文は282条からなり、その一部の内容は失われています。
このハンムラビ法典は、
- 商業
- 農業
- 犯罪
- 結婚
- 相続
などの社会経済の様々な分野に関する条文を含んでいます。
数多くのコピーが作成され広く行き渡ったのですが、この法典に基づいて裁判を行った記録はありません。
実際には、模範判例集に近いものであったとされています。
また、ハンムラビ王自身は領内の裁判を監督し、
ふむ、そちは無罪だ
と自ら場合によっては裁定を下していたそうです。
ハンムラビ法典の倍返しが怖い?
ハンムラビ法典は「目には目を、歯には歯を」というフレーズで有名です。
その意味合いは被害者や加害者の身分によって刑罰に違いを付けて、刑を多く科したんだそうです。
言ってしまえば、身分による不平等な刑罰を記した法律書だったんですね。
残酷だ!
とこれが現代で言われている理由です。
ある研究者によると、
ハンムラビ法典はハンムラビ王の権力と実力を強く表したもの
と述べています。
つまり、犯罪に対して厳罰を加えることが目的ではないんです。
刑罰以外にも、
- 財産の保障
- 奴隷解放
- 女性の権利
も認めていました。
ハンムラビ以後の慣習では、女性の権利は制限されます。
なので、このハンムラビ法典はかなり異例でもありました。
元々、バビロニアに支配されたシュメール人の女性の地位は高かったので、その影響もあったかもしれません。
この法典の刑罰に関して、以前までは乱暴で荒々しい刑罰とされてきましたが、
倍返しを禁止して同等の懲罰にとどめている。これは仕返しを防ぐ役割があったのではないのか?
と最近では見られています。
つまり、事前犯罪に対して与えられる限りの刑罰を課す事によって犯罪を防ぐことこそが、この条文の本来の意味だったのです。
ハンムラビ法典のあらすじと内容
ハンムラビ法典について、私たちの価値観そのままを当てはめて考えることは出来ません。
ですが、この法典は当時としては以下のような特徴がありました。
- 男女平等や人権擁護と同じような意味合いを持つ条文
- 犯罪の遭った被害者や遺族に対して加害者側に賠償を命じる
- 加害者が分からない場合は国のお金で損害補償をする
- 被害の重さ軽さによって賠償額が定められていた
また、ハンムラビ法典はこのようにも伝えられています。
太陽神からハンムラビ王に授けられた
しかし、これは宗教的に偏った内容ではありません。
身分階級による刑罰の差はあるのですが、人種・宗教差別はなかったのです。
あとがきには以下のように記されています。
強者が弱者を虐げないように、正義が孤児と寡婦(夫を失った独身の女性)とに授けられるように
ハンムラビ法典は厳しさだけでなく、弱者に対する愛を持って作られた法律書だという事が分かりますね。
ハンムラビ法典と旧約聖書の関係
ハンムラビ法典は『モーセの律法書(モーセ五書)』の基になったという説もあります。
なぜなら、旧約聖書にも「目には目を、歯には歯を」というフレーズがあるからです。
しかし、その内容は大きく違います。
両方の内容をまとめてみると以下となります。
- ハンムラビ法典:身分の違いによって刑罰が変わる
- 旧約聖書:倫理的な罪の方が重い処罰
例えば、旧約聖書の中では物品の損害などのような商業的な罪は倫理的な罪と比べて罪が軽いのです。
もしハンムラビ法典と旧約聖書に関連があるのであれば、どういった経緯で引用されたのかを知りたいものです。
そんなハンムラビ法典と関わり(?)がある『モーセの律法書』についても詳しく知りたい方は、
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