古代イスラエルの失われた10支族とは、旧約聖書に書かれたイスラエルの12部族のうち行方知らずの以下の10部族を指します。
- ルベン族
- シメオン族
- ダン族
- ナフタリ族
- ガド族
- アシェル族
- イッサカル族
- ゼブルン族
- マナセ族
- エフライム族
古代イスラエルの失われた10支族は歴史的な背景がきちんとあります。
その背景をきちんと理解しておくと、後に展開される日本人と古代ユダヤ人が同じ祖先を持つという日ユ同祖論についてもより理解が深まるでしょう。
アブラハムの家系
旧約聖書のアブラハムが、メソポタミアのウルからカナンの地を目指して出発したところから、イスラエルの歴史は始まります。
その孫はヤコブで、その12人の息子たちがイスラエル12支族なのです。
ヤコブについてさらに詳しく知りたい方は、
ヤコブとは?イスラエルの名前を持つ男の4つのエピソード
旧約聖書の『創世記』の中で神と戦った人間こそがヤコブです。ヤコブとは、「イスラエル」という国名の起源でもあります。そんな超重要人物であるヤコブ(イサクの息子)の一生をストーリー仕立てで解説しています!
こちらの記事も併せてお読み下さいませ。
ヤコブの時代にエジプトに移住した後に、子孫はやがてエジプト人の奴隷となります。
奴隷期間は、何と400年ほど続きました。
その後、モーセは民族をエジプトから連れ出します。
モーセがエジプトから脱出したお話は、
『出エジプト記』とは?モーセのあらすじを簡単に解説!
旧約聖書『出エジプト記』に描かれている預言者モーセの人生って一体どうだったの?なぜモーセは人々と一緒にエジプトを脱出しなければならなかったのか?海を割る奇跡を起こしたモーセのストーリーを簡単にご紹介しております!
こちらの記事をお読み下さい。
イスラエル12支族は、シナイ半島を40年間放浪した後に定住し始めます。
そして、200年ほどかけてあたり一帯を征服して行ったのです。
南北王国分裂の背景
ダビデ王の時代には、統一イスラエル王国として12部族がひとつにされました。
ソロモン王の死後、彼の息子が王位につき、父の代から厳しかった苦役をなんとか軽減してもらおうと、国民は訴えました。
しかし、王(息子)は断り、
さらに状況を厳しくするぜぇ?
と国民に返答しました。
これにより、北部の部族は離れて行きました。
そこで、元の王国名を引き継いだ北王国イスラエルを立てるのです。
エジプトに追放されたソロモンの家来を呼び戻して、彼を王に仕立て上げます。
イスラエル王国の南北分裂についての歴史について詳しく知りたい方は、
イスラエル王国の南北分裂から滅亡までの歴史を簡単に解説!
イスラエル王国とは、古代イスラエルに存在したユダヤ人国家の統一王国でした。 なぜユダ王国と北イスラエル王国に分裂したの? 滅亡の原因は何だったの? イスラエル王国の南北分裂から滅亡までの歴史を分かり易く解説!
こちらの記事をお読み下さい。
南北王国の宗教事情
北王国では、金の子牛の像を置いて王国の祭祀の拠り所としていたとされています。
これは、エロヒムの台座として置かれたものとされいます。
一方、南ユダ王国の都エルサレムではヤハウェを信仰していました。
- 北イスラエル王国:エロヒム信仰
- 南ユダ王国:ヤハウェ信仰
当時のイスラエル民族は、一神教を信仰していませんでした。
なので、このエロヒム信仰やヤハウェ信仰も、多神教の一種だったと考えられています。
そんなヤハウェについて詳しく知りたい方は、
ヤハウェとは?謎の創造神についての正体を分かり易く解説!
かつて神は「ヤハウェ」と呼ばれていました。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教全ての宗教に共通する神(ヤハウェ)とは、どういった存在なのでしょうか?意外と深い話なので、こういう宗教関係に興味ある方はぜひ!
こちらの記事をお読み下さい。
失われた10支族と2支族
北王国は、紀元前722年にアッシリアにより滅ぼされます。
10支族の指導者達は、捕虜としてアッシリアに連行されましたこれを、『アッシリア捕囚』と言います。
この10支族の行方は文書に残されていません。
そのため、残りの2部族によって「失われた10支族」と呼ばれたのです。
捕虜とならなかった旧北王国の住民は、統制を失って他の民族の中に埋没して行きました。
そして、次第に
10部族としてのアイデンティティを失った
と言われています。
異民族と結婚し、混血することもありました。
ユダ族等の残り2支族は、エルサレムを都として南ユダ王国を建国後、新バビロニアによって滅ぼされました。
指導者達は、10支族と同じくバビロンなどへ捕虜として連行されますこれを、『バビロン捕囚』と言います。
ユダヤ教の誕生
失ったエルサレムの地と神殿の代わりに、2支族は宗教的な繋がりを強めました。
律法を心の拠り所にしていた時に出来た宗教。
それが、ユダヤ教でした。
宗教・文化的アイデンティティを保つため、
- 異民族との結婚を嫌う
- 異民族と結婚した者をユダヤ人コミュニティから排除する
という動きが見られました。
つまり、排他的な純血至上主義が信じられたのです。
ユダヤ教は、旧約聖書のみを信じ、新約聖書を信じない宗教です。
ユダヤ人と定義する時に、このユダヤ教を信仰する者と親にユダヤ人を持つ者とに分かれます。
ペルシア帝国とユダヤ人
ユダ族等は、離散後にユダヤ人と呼ばれるようになりました。
彼らは新バビロニアを滅ぼしたアケメネス朝ペルシアによって解放され、イスラエルに帰還しました。
この解放により、アケメネス朝ペルシアとユダヤ人は良好な関係を築けたようです。
エルサレム神殿も復興されました。
ペルシア人の王キュロス2世は、
色んな宗教画あって良いよね、うん
と支配した民族の宗教を平等に扱っていました。
なので、捕囚の民族の一つであったサマリヤ人も同様にその恩恵を受けていたのですが、ユダヤ人たちは
何だよ、あいつら!混血の異教徒めが
と彼らを忌み嫌いました。
サマリヤ人を異民族の混血と蔑み、イスラエル王国の末裔と認めなかったのです。
南北の王国時代の対立は、こういった民族的偏見を引き継ぐ対立へと変化したのです。
ユダヤ人のその後
アケメネス朝ペルシアがアレクサンドロス大王によって滅ぼされました。
そして、ヘレニズム時代になると、ユダヤ人はアレクサンドロス大王やその後継者であるギリシア人政権と激しく対立して行きました。
その後、ローマ帝国と同盟を結んだので、ユダ王国の領土は拡大しました。
さらに、ユダヤ人は商人の性格を強くし、商業を通して世界に広がって行くのです。
旧約聖書から始まった12支族。
彼らが後に、歴史的な背景により10支族と2支族に引き裂かれ、その内の10支族の行方は未だによく分かっていません。
日本では、日ユ同祖論が盛り上がりを見せていますが、果たしてその真相はいかに?
『日ユ同祖論』とは?イスラエルと日本の歴史の共通点まとめ
行方の知らない古代イスラエルの失われた10支族。その子孫が、もしかしたら日本にいるかも?果たして、その真実は?!都市伝説界でも有名な、日本人の祖先が実は古代ユダヤ人かも?という真相についてです。
こちらの記事も参考にして、あなたもその歴史の謎について一緒に考えてみて下さい!
今回の失われた10支族にも関連する日ユ同祖論については、都市伝説系YouTuberのナオキマンも取り上げている話題です。
そんな彼が、日ユ同祖論も取り上げた日本の都市伝説に関する本を出版しています。
もし気になる方は、こちらの書籍もぜひ読んでみて下さい。
世界史の現役公立高校教師として初めて、YouTubeに世界史の授業動画を公開すると、たちまち人気になった先生がいます。
YouTuber「Historia Mundi」としても活躍していますが、そんな山崎先生が世界史についての本を出版しました。
世界史を体系的に分かり易く学びたい方は、
こちらの本もぜひ読んでみて下さい。
参考:『日ユ同祖論』・『イスラエルの失われた10支族』