占星術は、天体の位置や動きと人間や社会のあり方を経験的に結び付ける占いです。
占いなので、もしかしたら星座占いを思い浮かべた人もいるかもしれません。
しかし、残念ながらこのページではあなたの未来や性格を占いません。
ここでは、占星術の歴史的背景や占星術が使われる目的について説明して行きます。
それでは、「占星術」について客観的にしっかりと勉強して行きましょう!
占星術の発祥とは?
起源は古代バビロニアの大規模な天体観測で、その当時は国家や王家の将来を占っていたようです。
その後ギリシアに伝わり、この時には個人の運勢を占うホロスコープ占星術に発展し、
- 西洋占星術
- インド占星術
- 東洋占星術
とその後にさらに発展しました。
ここからは、それぞれの占星術についてさらに詳しく解説して行きます。
西洋占星術
西洋占星術の起源はバビロニアで、
天の星々=神々
と結び付けられていました。
天で起こったことが、そのまま地上の出来事の前兆だと考えられていたのです。
ただし、この時代の地上の出来事は、主に君主や国家に関係したものばかりです。
その読み取りも本格的なものではなく、星の象徴的な意味を理解する程度でした。
例えば、このような感じです。
火星は軍神ネルガルだから凶兆!
紀元前332年のアレクサンドロス大王による占領で、エジプトはギリシアの支配下にありました。
この時代は、古代オリエント(中東)とギリシアの文化をミックスさせたヘレニズム文化と呼ばれ、
ホロスコープを使った占星術が登場
した時代でもあります。
そして、ここから現在の占いのやり方とより近くなります。
ホロスコープ占星術のやり方は、出生時による惑星の位置を図に写します。
こういった試みは、西洋占星術へのギリシャ人最大の貢献です。
とは言え、この時の占いはほとんどバビロニアのパクリだったんですけどね。
インド占星術
インド占星術とは、27もしくは28の星座であるナクシャトラを使ったインド固有の占星術です。
月の通り道に着目し、太陽の通り道を27分割して占う占星術でした。
しかし、ヘレニズム時代にはホロスコープ方式の占星術を取り入れ、
- 太陽と月
- 5惑星と9つの天体
- 9つの天体の神「九曜(くよう)」
- 十二宮と十二室
といったものを基礎にしています。
インド神話の神がたくさんいるように、インド占星術もややこしく現在の
- ナクシャトラ(白道二十七宿)
- 黄道十二宮
を併用した形と言われています。
ですが、これは本当かどうかまだはっきりとしていません。
また、仏教でこの占星術はより簡単かつ仏教化され、書物にまとめられて密教の一部として中国に伝わりました。
平安時代には、日本にも伝えられ、それが「宿曜道(すくようどう)」となったのです。
東洋占星術
古代中国の占星術も、天空の現象と占いが一緒にされていました。
しかし、バビロニア占星術とは違って、天体の配置ではなく星の見え方(日食や流れ星など)に注目をしていました。
古代の中国人たちは、こういった天変の現象は
天が与えた警告だ
と信じたのです。
これは、儒教の思想に強く影響されています。
そんな中国の占星術も、バビロニアが起源とされる黄道十二宮をパクった
六壬神課(りくじんしんか)
が戦国ー秦ー漢の時代には確立していました。
西洋占星術のようなホロスコープに、六壬神課では惑星の代わりに中国独自の神である十二天将を配布しました。
ちなみに、後の日本で十二天将は、安倍晴明をはじめとする陰陽師にとって必須の占術となりました。
その後、唐の時代にようやくインド占星術が密教として伝わり、それが日本にも伝わり宿曜道となります。
しかし、その後の中国では、国家が天文観測情報を独占してしまい、その影響で複雑な天文計算のない暦を基礎とした占術が主流となって行くのです。
現代の占星術ってどう?
現代では、占星術を自分の性格や恋愛相性を知るために利用する人達が多くいます。
事実、占星術の本は天文学の本よりも売れていて、日本では特に人気なような気がします。
占星術関連のキーワードをGoogleで打ってみると、
- 〇〇〇 当たる
- 〇〇〇 相性
などがよく出て来て、占い師の提供する占いサイトが数多く現れます。
日本だけでなく、イギリスでも『デイリー・メイル』という新聞が一面トップで占星術の記事を載せたことがあるほど人気です。
あるアンケート調査では、
星占いなんか信じてないし。ってか単なる娯楽じゃん?
と多くの人は答えたのですが、実際は本当に星占いを信じて、それに従って行動しているというのです。
そんな占星術を取り扱っている新聞や雑誌は、その仕事をほぼ若い記者に回していることが多いようです。
占星術と科学の歴史
かつては、哲学者や数学者が占星術師でもありました。
なぜなら、占星術の方が儲かったからです。
お金持ちの権力者たちは自分の将来や運命に大きな興味があり、その答えを出してくれるのが、
占星術だ
と信じたので、占星術の方によりお金を出しました。
そのお金によって、天文学を支えることにもなったのです。
しかし、長い年月を経て、占星術と天文学にはだんだんと距離ができて、別物となってしまいました。
地球は宇宙の中心で、全ての天体は地球の周りを回っているのだ
というプトレマイオス以来の天動説まで、天文学は占星術と一緒に発展しましたが、途中から
いやいや、宇宙の中心は太陽でしょ?地球は他の惑星と共に太陽の周りを回ってるのだよ
というコペルニクスの地動説が登場してから、天文学と占星術は別々になってしまったのです。
占星術と自然科学の関係
現代考えるような生物学や物理学などのような自然科学は、19世紀になってやっと誕生しました。
それ以前は、神学や心理学などを含む自然哲学が主流でした。
しかし、アイザック・ニュートンの万有引力の法則の発見をきっかけに、だんだんと占星術と自然科学の距離が離れて行きました。
そのため、現代の一般的な天文学者は天体の位置や動きを純粋に研究しています。
決して、天体の配置や動きにより分かる
- 人間の性格や運勢
- 国家の未来
などではないのです。
一方、現代の占星術専門家は、現代の自然科学に全く興味がなく、彼らは人の運命を予想するために惑星の位置を知る必要があるのです。
ただし、この2つの分野が重なるような研究は今でも若干あるようですよ。
占星術と心理学の関係
心理学に占星術を持ち込んだ人物こそが、カール・ユングで
星の位置にも意味があるように、全ての偶然のことには意味があるんだ!
という「シンクロニシティ」という考え方をユングは持っていて、その思想を占星術に引用したのです。
こういった背景があり、特にイギリスの占星術研究家と呼ばれる人達の中には、
心理学を引用しよう
とする者もいます。
また、1970年代に欧米で心理療法を研究しながら占星術を学ぶ人が増えたことにより、
心理占星学が発達したのでは?
と言われています。
昔は未知な事ばかりで、人生や将来に対する不安が現代以上に大きかったのかもしれません。
そのため、神や占星術などに己の人生を委ねることにより、昔の人々は幾分か楽になったのではないでしょうか?
その証拠に、心や精神の不安を消し去るために、現在でも占星術が占いとして使われているのだと思います。
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世界史を体系的に分かり易く学びたい方は、
こちらの本もぜひ読んでみて下さい。
参考:『占星術』