ユダヤ教には、重要な3つのお祭りがあります。
この3つの宗教的な行事を知っているだけでも、ユダヤ教への理解に繋がるでしょう。
その重要な三大祭りと言うのが以下の通りです。
- 過越
- 仮庵の祭り
- 七週の祭り
これら3つのお祭りは、ユダヤ人たちにとってどんな意味があるのでしょうか?
それでは、それらの内容を見て行きましょう!
過越とは?
過越(すぎこし)あるいはぺサハは、ユダヤ教の宗教的記念日です。
この時に食べる食事としては、
- マッツァー:膨らみの無いパン
- セーデル:儀式的な晩餐
等のメニューで祝います。
過越の期間は1週間で、始まる日はユダヤ暦に基づいているので、毎年3月か4月の間でずれます。
と言うのも、ユダヤ暦は太陰太陽暦だからです。
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過越の起源
過越は旧約聖書の『出エジプト記』12章の古代エジプトで起こった出来事に起源を持ちます。
エジプトで奴隷となっていたイスラエルの民をモーセが救うというお話しです。
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ストーリーを簡単に説明しますと、イスラエル人はヨセフの時代からエジプトで奴隷として虐げられてきました。
その後、神は80歳のモーセを民の指導者として約束の地へと向かわせようとします。
しかし、そこでエジプトのファラオが邪魔するのです。
くっ、邪魔しおって…!エジプトに十の災いをもたらそうぞ!!
と神は災いをもたらします。
その10番目の災いが、
人間動物関わらず初めて生まれた子を撃つ
というものでした。
我は戸口に印のない家に災いをもたらす事に決めたから
と神はモーセに伝えます。
モーセから神のお告げを聞いて、イスラエル人たちは戸口に印を付けて災厄を過ぎ越したのです。
これが、「過越」の名前の由来です。
こうして、ユダヤ人にとって過越祭は秋の「仮庵の祭り(かりいおのまつり)」と並ぶほど大切な祭日となったのです。
このお祭りの本来の起源は、遊牧民が冬から夏に宿を求めて移動する際の厄除けの祭事でした。
元々、過越とは関係なかったのです。
ところが、いつしか『出エジプト記』の過越の言い伝えと結び付けられるようになり、ユダヤ教のお祭りとなったのです。
種入れぬパンの祭(除酵祭)もまた、起源は過越とは関係ありませんでした。
ただの農業祭でしたが、過越祭と除酵祭が種なしパンを食べる習慣を持ち、かつ祭りが行われる時期も近かったため、いつしか併合されて一つの祭りとなったのです。
聖書の過越
旧約聖書の中で、過越はこのように書かれています。
アビブ(ニサン)10日
傷のない雄の子羊、または山羊を選び分ける。
『出エジプト記』12章5節
アビブ(ニサン)14日
その羊(または山羊)を屠殺し、その血を家の2本の戸柱と戸口の上部に掛ける。
『出エジプト記』12章6-7節
アビブ(ニサン)15日(日没で日付が変わる)
夜にその肉を焼き、酵母の入っていないパン(マッツァー)と苦菜(マーロール)を添えて食べる。生のまま、または煮て食べることは禁止されている。
『出エジプト記』12章8-9節
現在のユダヤ教やキリスト教の聖餐式(せいさんしき)でも、酵母の入っていないパンを食べる習慣があります。
一方、正教会や東方教会では、酵母入りの発酵したパンを聖体礼儀で使います。
残った肉は火で焼き尽くす必要がある。朝まで残しておいてはいけない。
『出エジプト記』12章10節
除酵祭においては、
神への祭りとして代々祝わなければならない。
(12章14節)
14日の夕方から21日の夕方までの七日間は酵母入りのパンを食べてはならない。
(15, 18節)
1日目と7日目の聖会の日には仕事をしてはいけない。
(16節)
となっています。
除酵祭の規定に関しては、時を定めるものが多いですね。
一方、過越祭は現在でも行っているものとそうでないものとがあります。
現代の過越祭
聖書に従って、ユダヤ教は現在でも過越祭(除酵祭)を行い、ほとんどのユダヤ教徒が参加しています。
そのお祭りの期間中、彼らは「出エジプト」に関する書物を読み、男子の多くは敬虔を示すため「キッパー」と呼ばれる縁なし帽子を被ります。
過越の食事
『出エジプト記』のモーセがユダヤ人たちを率いて逃げようとした時、
待て、逃がさんぞ…!!
とエジプト王の追跡から、彼らは早く逃げなければいけませんでした。
その時に、パンを膨らませ待つだけの時間がなかったので、
酵母を入れないパンをそのまま食べた
と言われています。
3月末から4月初めの過越の1週間。
この時の記憶を忘れてはいけない…!
とユダヤ人たちは酵母で膨らませたパンを食べないのです。
過越祭の食卓で主催者が行う祈りには、
今年は違う土地であっても、来年こそはエルサレムで!
という言葉が含まれています。
全世界に散らばったユダヤ人たちが、数千年に渡ってこの言葉を口にし続けた結果、
イスラエルの地に故郷を再建しよう!
というシオニズム運動に繋がったのです。
ちなみに、過越祭は日本の正月に似ていると言われ、この説は「日ユ同祖論」の根拠の一つとなっています。
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仮庵の祭りとは?
仮庵の祭り(かりいおのまつり)とは、一般に太陽暦10月頃に行われるユダヤ教のお祭りです。
ヘブライ語で仮庵は「スコット」と言います。
ユダヤ人の祖先がエジプト脱出の時、荒野でテントに住んだことを記念して、祭りの時は仮設の家、すなわち仮庵を建てて住んだことに由来します。
旧約聖書には、きちんとこのお祭りに関する規定があります。
『レビ記』には、
祭りは7日間で8日目に集会を開いて犠牲を捧げる
とあります。
最初の日と8日目は安息日なので、仕事は出来ません。
パレスチナ地方の秋には果物が多く収穫できるので、この時期を「秋の収穫祭」としても祝っています。
初日から7日間、みんな仮庵(仮説の家)に住みます。
かつては、毎日「焼き尽くす捧げ物」が捧げられましたが、神殿崩壊後に犠牲は行われていません。
イエス・キリストの時代には仮庵の祭り中、毎日エルサレム神殿へ市内の池から黄金の器で水を汲んで運んでを毎晩2回は行っていました。
そして、犠牲の際に供え物と一緒に祭壇に水を注いだのです。
現代のイスラエルでも、仮庵の祭り中は至る所に仮庵が設置されています。
七週の祭りとは?
七週の祭り(シャブオット)とは、ユダヤ教の祝祭のことです。
過越、仮庵の祭とともに三巡礼祭の一つとなっています。
太陽暦の5月か6月に行われ、過越の7週間後に始まる約3日間のお祭りです。
イスラエルの民がエジプトを出て行き、49日後にシナイ山で神が律法を与えたことを記念しています。
これがいわゆる「モーセの十戒」です。
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また、七週の祭りは春の収穫を感謝する農業祭としての意味もあります。
基本的にこの祭りの日は安息日で、仕事をするのは禁止されている代わりに以下の事を行います。
- 『トーラー(モーセ五書)』の学習
- 『ルツ記』の朗読
また、食事に肉を使うのも禁止されていて、その代わりに乳製品を食べます。
キリスト教では、ちょうどこの七週の祭りの日に聖霊が降ったとされています。
この聖霊降臨のエピソードを、「ペンテコステ」と言います。
そして、キリスト教では七週の祭りの日をペンテコステとして祝うのです。
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