キリスト教の中にも、イスラム教のラマダーン(断食)と同じように節制または断食を行う期間があります。
それが正教会では「大斎(たいさい)」と呼ばれます。
簡単に言えば、
大斎期間中は節度ある行動・食事をしましょう
という内容です。
そんな大斎について、ここではより詳しく解説してみました!
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大斎(たいさい)とは?
「赦罪の主日(しゃざいのしゅじつ)」の晩のお祈りの後、
エルサレム入城の日までの6週間に渡る期間に行う禁食
のことを大斎と言います。
赦罪の主日とは、大斎前の準備期間の最後の主日(日曜日)のことを言います。
赦罪の主日の晩のお祈りの後、信者が互いに
どうか私の罪をお許しください
と赦罪(謝罪)を行うことからその名前があります。
エルサレム入城の日とは、イエス・キリストが十字架にかかり亡くなった3日後に復活したとキリスト教徒が信じる出来事の一週間前に、エルサレムへ入城した記念日のことを言います。
日常の会話では、受難週(エルサレム入城の日から復活大祭の前日までの一週間)を含めて大斎と呼びます。
復活大祭とは、正教会での呼び方でイースター(復活祭)と同じ意味合いです。
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また、大斎開始から週末を除いた受難週の水曜日までの40日間を「四旬大斎(しじゅんたいさい)」と呼ぶことがあります。
大斎における意味や目的
大斎期間中、
禁食はもちろん、祈祷、施しなどの慈善をいつもより心がけましょう
と信者には求められます。
この信仰実践の目的は、
神との交わりに、信者がさらに向かいますように
という想いがあります。
昔の大斎は入信希望者に対しての洗礼準備のための期間でした。
そして、信者のほとんどが幼児洗礼を受け、改宗者が稀になって行くにつれて、
信者たちよ、自己を振り返り新たに信仰を深めましょう
と信仰心の意義が強調されるようになって行きました。
40日の大斎の祈りで信者は、
自分はこんなことしてしまったなぁ。そもそも人間の根本の罪って何だろう?そんな罪人である人間への神の慈しみが半端ねぇな
と己の罪の後悔と人間と神との交わりについて、禁食やその他の節制をしながら考えます。
この期間は安息日(何もしてはならない日)と土日を除いて、普通の聖体礼儀を行うことが許されません。
なぜなら、この期間はキリストの苦しみを思い自身の罪を後悔する期間であるため、「歓び」である聖体礼儀を行わないのです。
また、同じように結婚式も行う事が出来ません。
ちなみに、日本語の「斎」は神道からの語です。
神道での斎の禁食は、食による「穢れ」を避けるためのものですが、正教会が使う「斎」にはその意味合いがありません。
なぜなら、キリスト教には特定の食べ物を穢れとする考え方がないからです。
大斎における節制(食事)
正教会は食の節制に大きな効果を認めています。
大斎期間全体で食の節制が行われ、特に平日の水曜日と金曜日に最も厳しい節制が一定して行われます。
以下に、控えられる食事をまとめます。
土日と安息日は聖体礼儀を行う歓びの日であり、歓びを表す酒とオリーブ油が使われます。
また、「生神女福音祭((しょうしんじょふくいんさい))」が大斎中に行われる場合には、魚が許されます。
茶やコーヒーなどの飲用は禁止されず、貝・エビ・カニ類なども問題ありません。
また、カエル肉などの両生類も差し支えないとされています。
ここからは、ちょっと曖昧な食事に関する規定です。
油はオリーブ油のみか、ゴマ油などの他の油も含まれるのかは論者により見解が違います。
19世紀初期には、ほとんどの油を使った食品が禁止リストに載りました。
しかし、ヒマワリ種子はリストになかったので、ロシアではヒマワリ種子を日常的に食べる習慣が発達しました。
そのため、19世紀半ばにロシアは食用ヒマワリ生産の先進国となりました。
こういった背景から、ロシアではソ連時代からヒマワリを国花としています。
食事だけでなく、旅行・宴席などの享楽も出来るだけ避けるのが望ましいとされています。
他者からのもてなしは、受け入れるべきか断るべきかと賛否両論あります。
ちなみに、キリスト教では正教会と西方教会とでこの節制期間の呼び方や習慣が違います。
西方教会では、この節制の期間を「四旬節(しじゅんせつ)」と呼びます。
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参考:『大斎 (正教会)』