ラマダーン月の断食はイスラムの六信五行の内の一つです。
つまり、イスラムで最も重要な5つの義務の内の一つなのです。
青年以上のムスリム(イスラム教徒のことを言う)の男女は、ラマダーン月の1ヶ月間は日の出から日没まで毎日断食しなければいけません。
そして、日没から日の出(夕方から翌未明)までの間に、一日分の食事を摂ります。
断食なんて、よくするな…。
と思われる方も多いでしょう。
この記事では、
イスラム教徒たちがラマダーン月に行う断食についての基本的な豆知識
について詳しくまとめてみました!
イスラム教徒になったばかりの人や、イスラム教徒でない一般の方でも理解してもらえるように分かり易く書いています。
ラマダーン月とは?
「ラマダーン」を断食と思う人も多いでしょうが、あくまでもヒジュラ暦における9月の名前です。
ただし、最近では「ラマダーン=断食」という意味で使う人も増えて来ています。
このラマダーン月では、ムスリム(イスラム教徒)は日の出から日没にかけて、一切の飲食を断ちます。
しかし、私たちの使っている暦上の9月に断食が行われる訳ではありません。
イスラム暦における9月は季節が変わります。
ラマダーン月の期間や時間についてさらに詳しく知りたい方は、
ラマダンはどれくらい?始まりから終わりまでを徹底解説!
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断食中は飲食を断つだけでなく、
- ケンカ
- 悪口
- 闘争
- タバコの喫煙
- 性交渉
なども避けられ、自身を清めてイスラム教への信仰心を強めます。
ラマダーン期間中は、
ラマダーン・カリーム!(恵み多い月ラマダーンおめでとう)
という挨拶がムスリム(イスラム教徒)たちの間で行われます。
ラマダーンの歴史的背景
ラマダン月はイスラムにおいて非常に重要な月です。
ラマダン月に預言者ムハンマドがメッカ近くのヒラーの洞窟にこもっていました。
その時、ムスリム(イスラム教徒)たちにとっての聖書であるクルアーン(コーランとも言う)の最初の啓示が下されたのです。
読め、創造なされるお方、あなたの主である神の名において。体外に流れ出て固まった血から神は人間を創られた。
そして、さらにこう続きます。
読め、あなたの主は最高の尊いお方であられ、筆によって書くことを教えられたお方。人間に未知なることを教えられたお方である。
クルアーンの「クル」は日本語で「読め」を意味します。
この天使がムハンマドに最初に伝えた言葉、
読め
の言葉が、そのままクルアーンとして使われているのです。
また、アッラー(神)はクルアーンの中でこう言われています。
信仰する者よ。お前たち以前の者にも定められたように、お前たちにサウム(斎戒)が定められた。おそらく、お前たちは我を畏れるだろう。
なぜ断食を行うのか?
最近では断食ダイエットなども流行っているせいか、
健康の為に断食するんでしょ?
と見られがちですが、決してそういう意味だけではありません。
ちなみに、断食によるダイエット効果や健康への影響について詳しく知りたい方は、
ラマダンは太る?痩せる?体への11の影響を解説してみた!
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それでは、何故この期間に断食をしなければならないのか?
その理由は3つあります。
それを以下でまとめると、
- 自制心を強くする効果
- 貧困者への気持ちの理解
- ムスリム同胞意識の芽生え
こうなります。
現代社会では、欲望をそそるようなものが多くあります。
そんな欲望に支配されない為に、自らが欲望を支配しなければいけません。
欲望なんかに負けてたまるか…!
ラマダーン月では、そんな欲望に打ち勝ち、生活を抑制する精神的な強さを身に付ける事が試されているのです。
また、サウムをする事によって食べ物を食べれない生活をする事になるので、
貧しい人々は、こんな思いをしているのか…
と貧困者の気持ちが理解でき、同情心や親近感が湧きます。
そして、そういう他者への想いは
世界中のムスリムと繋がっているんだ!
という同胞意識をも芽生えさせます。
断食を行う意味や目的
断食には、アッラー(神)に対する崇拝と服従を表す祈りの一つとしての意味があります。
我々が生きているのは、創造主であるアッラーからのお恵みのお陰…!
と感謝する気持ちを再認識できるのが、ラマダーン月なのです。
断食の目的の一つは、貧困者への親近感を育てることです。
余裕のある範囲で、できるだけ多くの施しをする事が勧められます。
それは、何も金銭だけとは限りません。
断食が終わった夜に、人を食事に招いて一緒に食べる事もその一環です。
断食終わりの食事を「イフタール」と言います。
イフタールについて詳しく知りたい方は、
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また、多くの人が「ザカート(喜捨)」の決算日をラマダーン月にしています。
一年の貯蓄の2.5%を貧しいムスリム(イスラム教徒)に施します。
ザカートについてさらに詳しく知りたい方は、
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最後に、ムスリムたちはラマダーン明けのお祭りを行います。
これは「イード・アル=フィトル」と呼ばれ、盛大なものとなります。
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旧約・新約聖書のあらすじから、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教までを1冊の本でまとめたものがあります。
聖書の基本から発展編まで、さらに深く知りたい方には持って来いの本なので、
気になる方は、こちらの本もぜひ読んでみて下さい。
参考 : 『ラマダーン』・『イスラーム アキーダとイバーダ』