旧約聖書にある『ダニエル書』はユダヤ人の男性であるダニエルを主人公とする物語です。
このダニエルですがキリスト教では預言者として扱われているようですが、ユダヤ教は預言者とはみなしていないようです。
では、『ダニエル書』の物語とは一体どのようなものだったのでしょうか?
さっそくご紹介させていただきます!
ダニエル、エリートに選ばれる
ダニエルがいた時代はネブカドネザル2世がエルサレムを陥落させ、バビロン捕囚を行っていた時代でした。
ネブカドネザル二世やバビロン捕囚についてはこれらの記事をご覧ください。
ネブカドネザル2世は占領した領地の行政を行う役人を養成するために次のことを言いわたします。
ユダヤ人の王族と貴族の中から、体が丈夫で、賢くて才能ある顔の良い少年たちを選んで教育させろ
この選ばれた少年の中にダニエルの姿があったのです。
ダニエルは思いました。
僕はユダヤ人だ。絶対に異邦人の肉や酒で自分の身体を汚すもんか!異邦人の地にいたって神は絶対に唯一なんだ!
ダニエルが信じていたのはもちろん唯一神であるヤハウェです。
ヤハウェに関してはこちらの記事を参考にして下さい。
ヤハウェとは?謎の創造神についての正体を分かり易く解説!
かつて神は「ヤハウェ」と呼ばれていました。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教全ての宗教に共通する神(ヤハウェ)とは、どういった存在なのでしょうか?意外と深い話なので、こういう宗教関係に興味ある方はぜひ!
ダニエルは抜きんでて優秀だったため、王に仕えることができ、とても重用されるようになりました。
ネブカドネザル2世の夢の解き明かし
ある日、ネブカドネザル2世が不思議な夢を見ます。
なんだか変な夢をみたんだ。変な像があってよ。その像の頭は純金で胸と腕が銀、腹と腿(もも)が青銅、すねが鉄、足は一部が鉄で一部が陶土で出来てたんだ。そしたら、その像に一個の石が投げつけられて、足が割れて、そのまま像は粉々になって跡形も無くなっちまうんだけど、粉々になったものはそれぞれ全地にひろがっていったんだよな…。これが何の意味を指すのか分かるやつはいるか?
ネブカドネザル2世は賢い人たちに答えを求めたのですが、誰も答えられずいらつきました。
なんだよ、誰も分からねーのかよ。お前ら皆殺しにするぞ
お待ちください!
そこで待ったをかけたのがダニエルです。
私が解き明かしをいたしましょう
ほう。お前に出来るのか?どれ、聞いてやろう
こうしてダニエルはネブカドネザル2世の夢の説明を始めました。
王が夢の中で見た像の金の頭の部分。これは王自身を示していて、その頭の下にある銀、青銅、鉄、陶土は王についている属国の王国を表しています。これらが石によって粉々に砕け、バラバラになるということはついにこの王国の滅びが近付いているということです
なんとダニエルはネブカドネザル2世の夢から王国が滅ぼされることを預言したのです。
その後、再びネブカドネザル2世が見たおかしな夢の解き明かしもダニエルが行い、またしても王国の滅亡を解き明かしました。
この夢の解き明かしの成果により、ダニエルはバビロン全州にまたがる長官に任命されることになったのです。
このようなダニエルのように位ある人の夢の解き明かしを行い、自らが出世するという物語は旧約聖書の創世記に描かれている『ヨセフ物語』にとてもよく似ています。
ヨセフ物語についての記事もありますので、
ヨセフ物語とは?兄弟和解までのあらすじや夢の意味を解説!
旧約聖書の『創世記』に出てくる「ヨセフ物語」とは?この物語に登場する ヨセフが読み解いた夢の内容とは?こういった疑問に、 ストーリー仕立てで内容を紹介しています!とても感動的な内容となっていますよ…。
よろしければそちらもご覧ください。
ダニエル、指が書く文字を解説
時代は進みベルシャザル王の御代の頃、王が王宮で大宴会を開いてると不思議な現象が起きました。
おい、手が出てきたぞ!
なんと一本の手が急に現れ、宴会場の壁に文字を書きはじめたのです。
メネ、メネ、テケル、パルシン
指が壁に書いた言葉です。
一体なんだこれは!?誰かどういうことか説明してくれ!
ペルシャザル王はパニックです。
すると、ダニエルが呼ばれたのです。
ダニエルはこう説明します。
メネは数えるという意味です。つまり、あなたの治世を数え、それがもう終わるということです。テケルは測るという意味です。あなたは神に秤にかけられ不足であると判定されてしまいました。パルシンは分けることを意味します。あなたの王国がメディアとペルシアに分けられる事を意味します
ダニエルが言ったことは新バビロニア王国の終わりを意味していました。
そして、後にベルシャザル王は殺され、本当に王国は滅亡してしまうのです。
次に、キュロス2世によるアケメネス朝ペルシアの時代がやってくるのです。
キュロス2世についてはこちらの記事をご覧ください。
『キュロス2世』とは?アケメネス朝ペルシア初代国王の功績
キュロス2世はアケメネス朝ペルシアの初代国王です。彼の功績は古代エジプトを除く全ての古代オリエント諸国を統一し、大帝国を築いたことでした。そんなキュロス2世には、壮絶な過去や英雄としての逸話があった?!分かり易く解説しています!
新バビロニア滅亡のその後
新バビロニア王国がキュロス2世率いるアケメネス朝ペルシアに征服された後も、ダニエルはその地で重用されるようになりました。
しかし、そんなダニエルに他の家臣たちは嫉妬しました。
そして、なんとその家臣たちによってダニエルはライオンの洞窟に投げ込まれてしまいました。
ダニエル、大丈夫だ。我がついている!
ダニエルにとって危機一髪な出来事でしたが、神の力によりダニエルはライオンに襲われることはありませんでした。
逆に、ダニエルを陥れようとした者たちがライオンの餌となったのです。
ダニエルは神に祈っていると天使ガブリエルが現れ、メシアに関するお告げを受けたとも言われており、神のお気に入りだったと伺えます。
ダニエル書補遺(スザンナと長老たち)
旧約聖書の『ダニエル書』には『ダニエル書補遺(だにえるしょほい)」と呼ばれるギリシア語訳には描かれている短編物語のような部分があります。
この『ダニエル書補遺』は『ダニエル書への付加』とも呼ばれていますが、ユダヤ教及び一部のキリスト教教派が正典と認めていない部分を指します。
この『ダニエル書補遺』に描かれている物語のうちの一つが「スザンナと長老たち」の物語です。
この物語はスザンナという人妻を中心とした裁判のお話で、最古の推理小説と呼ばれることもあるストーリーです。
スザンナ、エロじじい達に覗かれる
あるところに美しい容姿を持った人妻のスザンナという女性がいました。
彼女の旦那はヨアキム(エホヤキム、ヨーアキムとも言われています)で、街の有力者でした。
スザンナは美しいだけでなく、賢くもあり律法の知識もありました。
今から私は庭で水浴をするので、人払いをお願いしますね
スザンナは人を庭に近寄らせないようにして、そこで全裸になり水浴びをしていました。
しかし、そこを性欲を持て余したのぞき屋によって覗かれてしまうのです。
その覗き魔がよりにもよって巡回裁判官に選ばれていた二人の長老だったのです。
長老ってもっと良いイメージだと思っていましたが残念。
この物語での長老は悪役です。
二人の長老は全裸で水浴びをしているスザンナの姿をしっかりと覗いていたのです。
ほほぅ、ええもんが見れたもんじゃ
ここで満足すればよいものの、なんとこのエロじじい達は覗きだけでは飽き足らず、その後スザンナに自分たちとの情交を迫ります。
どんなメンタルしてんでしょうか、このエロじじい達は!
家に戻ろうとするスザンナの前に立ちはだかって二人の長老はこう言いました。
もしわしたちと交わらなければ、スザンナ、お前が庭で青年と密会していたと告発してやるぞ
なんとも最低な脅しですが、スザンナはこれに屈しませんでした。
あなたたちと交わるなんて、絶対に嫌です!
スザンナはこの要求を拒絶したために、脅迫通り逮捕されしまうのです。
老人たちの不正を正すダニエル
こうして無実の罪で逮捕されてしまったスザンナでしたが、ダニエルが登場する時にはなんと死刑になりかけていました。
凄まじい冤罪ですが、それに異を唱えたのがダニエルでした。
ダニエルは二人の長老たちに別々にとある質問をしました。
スザンナが青年と密会していたという場所に立っていた木は何の木でしたか?
この答えが二人は一致しなかったのです。
乳香樹(にゅうこうじゅ)じゃった
カシの木だった
とそれぞれ別の答えを言いました。
そして、ダニエルは言いました。
乳香樹はとても低い木です。一方カシの木はとても高い木だ。同じ現場にいた目撃者が間違えるにはあまりも大きすぎる木です。あなたたちは嘘をついている!
こうして不正な長老たちは処刑され、美徳が勝利を収めたのです。
絵画に描かれる裸婦スザンナ
スザンナはしばしば美術家のテーマとなることが多くありました。
中世では主にスザンヌが祈る姿が描かれていましたが、ルネサンス以降では水浴場面が描かれることが多くなったようです。
物語を強調した構図な絵もありましたが、裸婦に焦点を当てた作品も存在しております。
また、その絵には長老たちは全く描かれておらず、ただただ裸体のスザンナが描かれている場合もありました。
水浴の場面の描写についてはヨーロッパの画家が宗教心からというよりも、
「裸婦スザンナ」というものに興味を持って描いたものである
と言われています。
旧約聖書のあらすじを漫画で分かり易くまとめたものがあります。
イラストで旧約聖書をざっと理解したい方は、
こちらの本もぜひ読んでみて下さい。
旧約・新約聖書のあらすじから、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教までを1冊の本でまとめたものがあります。
聖書の基本から発展編まで、さらに深く知りたい方には持って来いの本なので、
気になる方は、こちらの本もぜひ読んでみて下さい。
参考:『ダニエル書』・『ダニエル』・『スザンナ (ダニエル書)』
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