『エステル記』はエステルという一人の女性を主人公にして描かれる旧約聖書の中の一つの書です。
聖書の中で『エステル記』のように女性の名前が書名として用いられているのは、実はもう一つ『ルツ記』があります。
『ルツ記』については別の記事がありますので、
旧約聖書の『ルツ記』のあらすじを分かり易く解説してみた!
旧約聖書で描かれる女性の結婚観とは?『ルツ記』のざっくりとしたあらすじと古代ユダヤの結婚観の一つ「レビラト婚」についても解説しています。旧約聖書で描かれる異邦人ルツの物語(エピソード)とは一体どんなものだったのか?
よろしければこちらをご覧ください。
では、『エステル記』はどのようなお話なのでしょうか?
あらすじの前に主人公であるエステルについて少しご説明させてください。
エステルはユダヤ人で、両親を亡くしていました。
そこで、いとこであるモルデカイに引き取られて生活していました。
エステルは大層美人だったようです。
物語はエステルが王様に見初められることから始まるのです。
王様が嫁探しを始める
ペルシアの王様であるクセルクセス1世はある日酒宴を開いていました。
わしの嫁、ワシュティ妃は凄まじい美人なんじゃ。そなたたちにもぜひ見せてやるわい
こうしてクセルクセス1世はワシュティ妃を酒宴に呼ぶよう伝えましたが、
私、行きたくありませんわ
とワシュティ妃がこれを拒否。
なめてんのか!われぇ!
と怒った王様は王妃を失脚させ、新たな嫁探しを始めます。
全国各地から美しい乙女を集めさせました。
その中にいたのがエステルでした。
なんだ、あの美しい娘は!
王様は誰にもましてエステルを気に入り、エステルは王妃になりました。
モルデガイ、王様を救う
エステルのいとこであり、養育者だったモルデカイはある日、王宮の門の近くで二人の役人を見かけました。
クセルクセス1世ってほんと酷い王だよな。俺達が殺さないと…
なんとこの二人は王を殺害する計画を立てていたのです。
ヤバイ…。これはエステルに伝えなければ…
モルデカイはこのことをエステルに伝え、エステルから王に知らされたために、王の命は守られました。
そして、この二人の役人は処刑されました。
この時モルデカイとエステルは自分たちがユダヤ教徒であることを明かさないようにしていました。
ユダヤの敵、ハマン登場
クセルクセス1世はアガグ人(マケドニア人という説も)のハマンを高い地位につけました。
皆、ハマンには跪いて敬礼するように
クセルクセス1世はそのような布告を出していましたが、モルデカイはそれに従いませんでした。
なんだ、あいつは!俺になぜ従わない!
ハマンはそのことで怒り、モルデカイがユダヤ人ということが分かるとユダヤという民族を恨むようになりました。
よしっ、ユダヤ人を皆殺しにしよう
さっそくハマンはクセルクセス王に取り入れ、ユダヤ人殺害に関する公文書を作成することに成功したのです。
エステルの決意
このことを知った多くのユダヤ人は絶望しました。
モルテガイより事実を知ったエステルにも衝撃が走りました。
しかし、彼女は言いました。
何の許可もなく王に会うことは最悪、死刑になります。私は王に近付けません
すると、モルテガイはこう言いました。
この時のために、あなたは王妃になったのでしょう
すると、エステルは覚悟を決めました。
ユダヤ人に三日三晩断食するように伝えてください。私も女官と一緒に断食をします。そしてそれが終わった時、王に会いに行きます
エステルは自分の命をかけて、ユダヤ人を守る行動を行うことを決めたのです。
ハマンの処刑
何も知らないハマンは上機嫌です。
あそこに柱を立ててくれ。あそこにモルテガイを吊るして処刑しよう
エステルは王にハマンと同席できる酒宴を約束してもらいました。
そこでハマンの悪事を暴いたのです。
王、私はユダヤ人です。どうして同じ民族が殺されようとしているところを見殺しに出来るでしょうか。それにハマンが今、殺そうとしているモルテガイは過去にあなたの命を救った人物です。どうかお考え下さい!
エステルの告白に王はハマンの処刑を決めました。
ちょうどいい。あそこにモルデカイを処刑するために立てていた柱があるじゃないか。ハマン。そなたをあの柱で処刑してやろう
こうして、ハマンは処刑されました。
ハマンの財産はエステルとモルデカイのものとなったのです。
エステルは後にユダヤ人虐殺の公文書を書き直す許可を得ることにも成功し、多くのユダヤ人の命を救ったのです。
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参考:『エステル記』
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