ヨーロッパにおける、ニカブやブルカの着用禁止問題はよくニュースで話題になります。
そもそも、ニカブとブルカの違いって何?
どちらも似ている服装なので、意外と見分けがつきませんよね?
また、ヨーロッパで起きているヴェール着用禁止問題について。
何故、ヨーロッパではニカブやブルカを禁止する法案を次々に出し、可決されていくのでしょうか?
そんなイスラム教におけるニカブやブルカの捉え方や政治問題について詳しく書いてみました。
ニカブとブルカの服装の違いとは?
ニカブ(または二カーブ)とは目以外の部分を覆うベールです。
このように、地味な色合いで目だけが出ているものです。
一方、ブルカとは頭から全身を覆うベールです。
目の部分も網状の布で覆います。
(BBC NEWSより)
アフガニスタンやサウジアラビアなどの国で、文化的な慣習により着用される事が多いみたいです。
ニカブやブルカを被る理由とは?
なぜムスリム(イスラム教徒)女性はニカブやブルカを被るのでしょうか?
これは、イスラム教徒が信じている聖典クルアーンにもきちんと記されており、
信者の女たちに言ってやるがいい。かの女らの視線を低くし,貞淑を守れ。外に表われるものの外は,かの女らの美(や飾り)を目立たせてはならない。それからヴェイルをその胸の上に垂れなさい。
自分の夫または父の外は、かの女の美(や飾り)を表わしてはならない。なお夫の父、自分の息子、夫の息子、また自分の兄弟、兄弟の息子、姉妹の息子または自分の女たち、自分の右手に持つ奴隷、また性欲を持たない供回りの男、または女の体に意識をもたない幼児(の外は)。またかの女らの隠れた飾りを知らせるため、その足(で地)を打ってはならない。あなたがた信者よ、皆一緒に悔悟してアッラーに返れ。必ずあなたがたは成功するであろう。 (御光章第24章31節)
この記述は、ヒジャブ着用にも当てはまります。
ヒジャブについてさらに詳しく知りたい方は、
「ヒジャブ」をイスラム教徒(ムスリム)達はなぜ被るのか?
何故イスラム教徒の女性たちは肌をベール(布)で覆い隠すのか?その理由をイスラム教の教えや気候・歴史的背景、最近のムスリムファッション事情から説明しているのがこの記事。ヒジャブについて興味がある方はぜひ読んでみて下さい!
こちらの記事も併せてお読み下さい。
そして、ヒジャブ以上にもっと保守的な衣装がニカブやブルカなのです。
イスラム社会では、女性の美は性的な部分にとどまらず、「髪の毛」ですら魅力的と見なされるのです。
この感覚は、古代の日本文化と似たようなところがあるでしょう。
平安時代の日本では女性は男性の前には出て来ず、御簾(みす)を隔てて和歌や手紙のやり取りをしていました。
そして、男性が無理やり御簾を開けて女性の前に現れると、女性は抵抗や羞恥心を感じたそうです。
歴史的に見ても、高貴な女性あるいは保守的な女性は肌を隠すものです。
それが、イスラムの世界では
- ヒジャブ
- ニカブ
- ブルカ
という被り物の種類がいくつかあるだけなのです。
これらを被るかどうかは自分の意思で決める人もいますし、周囲からの強要やイスラム文化の影響もあります。
今では、ヴェールを被る被らない人と分かれてしまっていますが、
ムスリム女性は、なるべく男性の前では肌を隠す
というイスラームの教えは、どのムスリム女性でも残っている教えなのではないでしょうか?
ブルカやニカブ着用禁止問題について
ISIS(イスラム国)による過激テロなどの影響により、西欧社会のイスラム教に対する恐怖や不安が顕著に表れている例があります。
それが、ブルカやニカブを着用禁止にしたヨーロッパの問題です。
フランスが公共の場で禁止した事により、他のヨーロッパの国々もそれに従ってヴェールを着用禁止としています。
頭髪部だけの被り物であるヒジャブなどは対象外とされ、対象とされるニカブやブルカを着用した者には罰金を支払う内容の法律です。
ですが、実質はヨーロッパの国々にブルカやニカブを被っているイスラム教徒の女性はごく少数です。
なので、たとえ禁止したとしても
大規模な反対運動やデモは起こらないだろう
という意見もあります。
また、スカーフも何も被っていないムスリム女性の中には、ニカブやブルカを見て、
こういう服装をするから、私たちイスラム教徒がテロリストと勘違いされる
と思う方もいらっしゃるようです。
イスラム教徒の間でも、ニカブやブルカの着用に関しては意見が分かれる問題なのでしょう。
ブルカやニカブを着用禁止にした国一覧
ブルカやニカブの着用を禁止したヨーロッパの国は、どれくらいあるのでしょうか?
それを表にしてまとめてみました。
|
国 | 年度 | 概要 |
---|---|---|---|
1 | フランス | 2011年4月 | 公共の場でのブルカ・ニカブ着用禁止法 |
2 | ベルギー | 2011年5月 | 公共の場でのブルカ・ニカブ着用禁止法 |
3 | スイス | 2016年7月 | ティチーノ(Ticino)州の公共の場でのブルカ・ニカブ着用禁止法 |
4 | ブルガリア | 2016年9月 | 公共の場でのブルカ・ニカブ着用禁止法 |
5 | ノルウェー | 2017年6月 | 教育現場で顔を覆う衣服の着用を禁止 |
6 | ドイツ | 2017年8月 | バイエルン州でヴェールの着用禁止(主に、ブルカ・ニカブ) |
7 | オーストリア | 2017年10月 | 公共の場でヴェールの着用禁止(主に、ブルカ・ニカブ) |
8 | オランダ | 2018年6月 | 部分的にブルカ・ニカブ着用を禁止 |
9 | デンマーク | 2018年8月 | 公共の場でのブルカ・ニカブ着用禁止法 |
10 | スイス | 2021年3月 | 公共の場でのブルカ・ニカブ着用禁止法 |
これらの法律は、国内のイスラム教徒のヴェール着用だけに限らず、旅行者であっても着用を禁じる国がほとんどです。
こうすると、アラブ圏のニカブやブルカ着用を文化に持つ国々は、必然的にこのように禁じている国に行けなくなります。
実際に、アラブ圏のイスラム教徒たちから批判や苦情が出ています。
サウジアラビアのようなお金持ちが多いアラブの国の女性たちが、ヨーロッパ旅行や観光するのを躊躇または行かないと決める事も多くなるでしょう。
西欧社会はスカーフをなぜ着用禁止に?
政治公約などにこのブルカやニカブ着用禁止を掲げると、聴衆からは拍手喝さいが起きるほど、ヨーロッパではイスラム・ヘイトが広まっています。
その背景には、主に3つの理由が隠されています。
イスラム過激派テロへの恐怖
1つ目は、アメリカで起きた同時多発テロをきっかけに、イスラム過激テロへの恐怖心が西欧社会にはあるという事です。
実際にニュースではテロ事件が頻繁に多発しており、ヨーロッパやアメリカではテロへの警戒がなお一層強まっています。
よく海外旅行される方は分かると思いますが、空港の厳重な検査を通過する際に、アメリカやヨーロッパのテロへの警戒心はひしひしと伝わって来ます。
移民受け入れ政策の影響
2つ目は、ヨーロッパで大々的に行われた「移民受け入れ」政策です。
フランスやドイツ、その他ヨーロッパの国々が少子化が原因の為に、積極的に移民を受け入れた時代がありました。
そして、その移民はイスラム圏(主に、北アフリカ)の人々も多く、低所得層としてヨーロッパの経済を支えて来たのです。
その移民2世3世もまた貧困層であり低学歴でもあります。
貧困の再生産ですね。
フランスの首都パリのスラム街で過ごしている貧困者はイスラム圏出身の者も多く、
移民を排除してやるぜ、フッ
という政治的口実を生み出したのです。
実際に、ISIS(イスラム国)に参加するヨーロッパのほとんどの若者たちは、移民でやってきたイスラム教徒の人達です。
テロ事件の背景には、移民受け入れによって引き起こされた格差問題も含まれています。
また、移民受け入れによりヨーロッパの人々は、
移民たちに職を取られている
という意識もあるようです。
フランスは国家制度の問題も
スカーフ着用に厳しいフランスでは、それ以外の背景もあります。
それが、国家制度の問題です。
フランスでは昔フランス革命が起こり、封建制度を打倒した歴史があります。
その当時、封建制度の下で優位な立場にあったのがキリスト教会です。
革命を起こしたフランス市民たちにとって、教会は倒さなければならない敵だったのです。
この革命があった事により、フランスでは宗教に対する敵対心が他の国よりも強いのです。
政治家がブルカやニカブの着用禁止を掲げると、それに賛同する国民の声は様々な理由や要因が絡まっているのが分かりますね。
ニカブやブルカにそこまでの違いはありません。
なので、ヴェール着用禁止問題の標的にされるのはいつもニカブとブルカなのです。
もしかしたら、このヴェール着用の範囲が次はヒジャブにまで及ぶかもしれません。
そうなった場合は、このヴェール着用禁止問題以上に大きな議論を沸き起こす事になるでしょう。
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