アメンホテプ4世は、古代エジプト第18王朝の王、つまりファラオでした。
しかし、彼にはもう一つの名前があります。
それがアクエンアテン(アトンに愛されるものという意味)です。
アメンホテプ4世は従来のエジプトの多神教の崇拝を禁じて、唯一神アトンへの信仰に切り替えることを宣言します。
これをアマルナ改革と言います。
世界初の一神教の誕生としても有名なようです。
このアマルナ改革とは何なのか?
そしてその唯一神アトンとは一体何なのか?
分かりやすく解説していきたいと思います。
アマルナ改革とは何なのか?
アマルナ改革で行ったことは大きく3つです。
- アトン神に捧げる新しい都市アケトアテン(アテンの地平線という意味)を建設。首都をテーベからこのアケトアテンへと遷都した。
- 従来の多神教的神々の崇拝の禁止。他の神々の祭祀を停止し、偶像を破壊するなど行い、唯一神アトンへの信仰へと切り替えた。
- アマルナ美術と呼ばれる写実的・開放的な芸術を生み出した。
一番大きいことは、王朝発祥の地であるテーベからアケトアテンに遷都したことではないでしょうか。
神のために都を変えるというのも凄い話です。
なぜアマルナ改革は起こったのか?
当時のエジプトで多くの信仰を集めていたのはアトン神でなくアメン神でした。
アメン神はテーベの町の守護神であり、このアメン信仰の全盛期がアメンホテプ4世の治世の頃でした。
アメン神を祭る神官勢力(アメン神団)が王を超えるほどの強い勢力になったのをアメンホテプ4世が嫌い、
宗教権力と王権を一本化することを狙ったのではないか?
と言われています。
しかし、アメンホテプ4世自身がアトンを讃える詩を執筆していたり、本当にただの政治的理由だけなのかは疑問が残ります。
『アトン』とは一体何なのか?
では、本題のアトン神ですが、正直夕日を神格化した神ということ以外あまりよく分かっていません。
テーベで祀られてはいましたが、マイナーな地方神の一つにすぎなかったそうです。
これといった神話もなく、はっきりした性質ももっていませんでした。
夕日の神であることから、太陽神ラーと同一視されましたが、あまり信仰は盛り上がらず、後には神性が薄れて、純粋に天体としての太陽を表すようになっていきました。
あまり特徴のないアトン神ですが、アマルナ改革ではっきりと変わった特徴が一つあります。
それは元々アトン神は太陽円盤の形で数多くの手を持っていて、その手で全ての人に平等に手を差し伸べている様子を表しているとされていました。
しかし、アマルナ改革によるアトン神はアメンホテプ4世にだけ差し伸べられています。
これは王の権威を強化する意図で描かれたと考えられています。
実は二神教だった?
唯一神として崇拝されたアトン神ですが、有名な宗教学者のエリアーデはアマルナ改革を
実際には二神教であった
と評しています。
まさかの世界初の一神教が崩れますが、どういうことなのでしょうか?
アメンホテプ4世は確かにアトン神のみを信仰しましたが、実は伝統的なエジプト宗教と同じようにアメンホテプ4世自身も神としていたのです。
先程、アトン神がアメンホテプ4世にだけ手が差し伸べられているように描かれていると書きました。
ですが、どうやら一般の民に対してはまずアメンホテプ4世を神として崇拝するように説いていたようです。
「神に愛された俺も神」状態でしょうか。
確かにそう考えると純粋な一神教とはなかなか言えないような気もします。
アマルナ改革の終焉
さて、この多神教から一神教への宗教改革ですが、結局失敗に終わっています。
あまりにも急激な改革だったために、普通にアメン神団による抵抗も激しく、加えて疫病も流行ってしまいアメンホテプ4世の思うようにはいかなかったみたいです。
そして、アメンホテプ4世の息子であるツタンカーメン時代にはまたアメン信仰に戻ったそうです。
本当に一体何だったんだ…。
ちなみに息子であるツタンカーメンについての記事はこちらです。
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アトンはアマルナ改革以前の天体としての太陽に戻されてしまい、アトン信仰はそのまま消滅してしまいました。
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