日本人にはあまり馴染みがないエジプト神話。
ゲームで登場する名前だけ知っている
くらいしか知らない人も多いのでは?
ここではエジプト神話に登場する九柱(神様を数える単位は柱なのです)をご紹介したいと思います。
天地創造の神:アトゥム
アトゥムはあらゆる始まりの神である水の神ヌンより自らを誕生させ、他の神々を生み出した創造主です。
アトゥムは基本的には人間の姿をしていますが、誕生は蛇の姿だったとされています。
蛇は古代エジプト人にとっては、
- 死を運ぶ忌まわしく強力な力を持つ畏怖すべき存在
- 蛇の脱皮によって無限に死と再生を繰り返す生命の象徴とする存在
といった2つの意味合いがありました。
アトゥムは最初独りだったので、自慰によって大気の神シューと湿気の女神フヌトを生みました。
さらに、この二神から大地の神ゲブと天空の女神ヌトが生まれて天地創造が行われました。
そして、アトゥムは後に太陽神ラーと習合して「ラー・アトゥム」となります。
大気の神:シュー
創造神アトゥムの自慰によって誕生した二柱のうちの一つが大気の神シューです。
妹でもあり妻でもある湿気の神テフヌトとの間に、大地の神ゲブと天空の神ヌトをもうけます。
このゲブとヌトがお互いに抱き合っているところをシューが無理矢理引き離したことにより、天と地が分かれたとされています。
湿気の女神:テヌフト
シューの妻であり、アトゥムの自慰によって誕生した二柱のうちの一つです。
テヌフトは雌ライオンもしくはライオンの頭を持った女神として描かれています。
テヌフトはシューの妻としての伝承ばかりで、単独の伝承はほとんど見られていないようです。
大地の神:ゲブ
シューとテヌフトの息子です。
天空の神ヌトの旦那でもあります。
妻のヌトと抱き合っているところを父親のシューに無理矢理引き離されたため天と地が別れ、それを嫌がったゲブの一部が隆起して山になったと言われています。
ゲブとヌトの間には、
- オリシス
- イシス
- セト
- ネフティス
という子どもをもうけます。
天空の神:ヌト
大地の神ゲブの妹であり、妻。
夫と抱き合っているところを父親のシューによって無理矢理引き離され、指先と足先だけで大地(ゲブ)に触れ、弓なりになった腹部に星が輝き、大気(シュー)がこれを支えているというのが世界観です。
オシリス、イシス、セト、ネフティスの母。
生産の神:オシリス
ゲブとヌトの息子であり、長男です。
オシリスは王冠をかぶり、身体をミイラとして包帯で巻かれている男性の姿で描かれています。
彼は生産の神としてエジプトの王として君臨し、知恵を司る神であるトトの助けをかりながら民に
- 小麦の栽培法
- ワインの作り方
を教えました。
さらに、法律を作って広めることにより人々から絶大な支持を得ました。
しかし、これを妬んだ弟のセトに殺されてしまいます。
オシリスの遺体はバラバラにされてナイル川に投げ込まれ、
- 妹であり妻であるイシス
- アヌビス(オシリスとネフティスの子ども)
によって男根を除く(魚に食べられたそうです…)身体の各部を拾われ、ミイラとして復活します。
そして、オシリスとイシスの息子であるホルスを後見としてたて、セトに奪われた王位を奪還させ、ホルスに継承させます。
それ以降、現世をホルスが治め、オシリスは冥界の楽園であるアアルの王として、死者を裁くことになりました。
ただし、この神話はエジプト人自身の記述ではなく、ギリシアの哲学者であるプルタルコスに基づくものである。
豊穣の女神:イシス
イシスは豊かなナイルの土壌を表す豊穣の女神で、外見はトビもしくはトビの翼を持った女性として描かれています。
夫であるオリシスがセトによって殺された時はその遺体を集め、繋ぎ合わせてトトとアヌビスの協力を得て復活させるなど、生と死を操る強大な魔力を持つとされています。
実はイシスにはイシス信仰というものがあります。
イシス信仰は紀元前1,000年紀に地中海沿岸全域に広がりました。
さらにローマに持ち込まれ、200年ごろにほぼローマ帝国全域で崇拝されていました。
このイシス信仰ですが、イシスは永遠の処女であり、処女でありながら神(ホルス)を身籠ったとされていました。
これって何かに似ていませんか?
そう、聖母マリアです。
イシス信仰は
- 信者が基本的に女性に限られた
- 純潔を守るという教義に男性からの評判が悪かった
といった理由のため衰退し、やがてキリスト教の隆盛とともにマリア信仰に取って代わられました。
イシスは献身的な妻や母という印象もあれば、強力な魔術師的存在として描かれる場合もあります。
そのため中世ヨーロッパでは、イシスは魔女の元祖とされることもありました。
保護と恵、破壊の神:セト
セトは兄であるオリシスを殺し「兄殺し」の汚名を受けます。
その後、王位を巡ってホルスと争い敗れるため悪神と捉えられることが多いですが、英雄的な一面も多く持つ神話もあるそうです。
ただ、どの神話にも共通する添え名が『偉大なる強さ』だそうです。
粗暴な神とされていますが、その暴力が外に向けられると保護と軍隊の守護神となるようで、ピラミッド文書の一つには
ファラオ(王)の強さはセトの強さである
との記述があるそうです。
セトは兄であるオリシスを殺し、親の敵討ちに乗り出すホルスの敵役になります。
神話のエピソードによると、セトとホルスの戦いは80年に及び、セトはホルスの左目を奪いますが、セトは睾丸と片足を失ってしまいます。
北斗七星はセトの片足とされていました。
敗れたセトは地上の世界を去り、地下世界に隠蔽しました。
そして、地上には雷の声として響くだけになるのです。
葬祭を司る神:ネフティス
セトの妹であり妻であるネフティスですが、オシリスの不倫相手です。
セトと子どもを作ろうとするが拒まれ、その代わりにオシリスを酒で酔いつぶして不倫関係を結び、子どもを身籠りました。
その子どもがアヌビスです。
オリシスが遺体になって川に放り込まれた時に、イシスと一緒に身体を拾っていたのがこのアヌビスです。
さらっとしていますが、ネフティスが凄まじいことをしているように感じるのは私だけでしょうか…。
以上がエジプト九柱の神々です。
しかしこの九柱ですが、一部ラー、トト、大ホルス、アメン=ラー、ホルスなどが入れ替わる場合もあります。
とにかく神が多い。
それが多神教の特徴だと思います!
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参考:『エジプト九柱の神々』
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