ギリシャ神話において愛と美と性を司る女神と言えばアプロディーテー(アフロディーテー)です。
彼女は美について誇り高く、最高の美神とも言われています。
また、彼女は愛と美と性を司っているだけあり、とにかく恋多き女性でした。
しかし、結婚相手はなかば脅されて結婚させられたヘーパイストスというブサイクな神でした。
夫婦仲はあまりよくなく、彼女は浮気を繰り返します。
有名なのはアレースという神とアドーニスという人間との浮気です。
それでは、アプロディーテーについて詳しく見ていきましょう!
ウーラノスの男性器から生まれた!?
アプロディーテ―はクロノスが切り取ったウーラノスの男性器にまとわりついた泡から生まれたとされています。
なぜクロノスがウーラノスの男性器を切り取らなければならなかったのかは、
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生まれたアプロディーテーの美しさに魅せられた西風が彼女を島へ運んだと言います。
アプロディーテ―が島に上陸すると美と愛が生まれ、それを見つけた季節の女神ホーラたちが彼女を飾って服を着せ、オリュンポス山に連れていきました。
オリュンポスの神々はアプロディーテ―の出自は分かりませんでしたが、彼女の美しさを讃えて仲間に加えたと言います。
アプロディーテーはゼウスの養女になったともされています。
アプロディーテーの旦那
そもそもアプロディーテーの本命というか、旦那とはどういう人なのでしょうか。
彼女の旦那はヘーパイストスという男神です。
ヘーパイストスはゼウスと正妻であるヘーラーとの間に出来た子どもなのですが、ブサイクであると有名です。
アプロディーテーとの結婚はヘーパイストスが無理矢理結婚を迫ったようなもので、アプロディーテーからすると醜い男と結婚させられたことがとても不満だったようです。
このヘーパイストスがどのようにしてアプロディーテーと結婚できるようになったのかは以下の記事にてご紹介しています。
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結婚生活に不満をもったアプロディーテーはさっそく浮気に乗り出すことにしたのでした。
恋多き女神アプロディーテー
彼女は恋多き女性というか女神であり、様々な神や人間と恋愛を行っていきました。
女神なのに、平気で浮気を行うこともしばしば…。
ここではアプロディーテ―のアレースとの浮気話をご紹介します。
アプロディーテーの浮気の始まり
アプロディーテーの浮気相手は軍神アレースです。
彼もまたヘーパイストスと同じくゼウスとヘーラーの子なので、ヘーパイストスとは兄弟関係にあります。
そんなアプロディーテーの浮気相手かつヘーパイストスの兄弟でもあるアレースについて詳しく知りたい方は、
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アレースは争いの神であり残虐な性格を持っていたため、他の神々からの評判はとても悪かったのですが、何を隠そうイケメンだったんですね。
アレース、すっごくイケメンじゃない!うちの旦那とは大違い!
醜いヘーパイストスと無理矢理結婚させられていたアプロディーテーはこのギリシャ神話の男神の中で一、二を争うと言われるほどの美男子のアレースに恋をし、二人は不倫関係になります。
はぁ、アレースって本当に素敵だわ。そりゃ性格はちょっと難ありかもしれないけど、うちの醜い旦那に比べるとよっぽどマシよ
アプロディーテーはアレースとの浮気を続けていましたが、それに気が付かないのが旦那のヘーパイストスです。
夫婦仲は冷めきっているのにも関わらず、アプロディーテーの機嫌が悪いだけだろうと楽観視していました。
しかし、そんなヘーパイストスに事実を告げにやってくる神が現れます。
ヘーパイストス、アプロディーテーが浮気をしているよ。見過ごしていいのかい?
太陽の神、へーリオスです。
なんだそれ!詳しく教えてくれ!
妻を信じていたヘーパイストスはへーリオスから告げられる真実に落ち込みました。
しかし、同時に激しい憎しみが芽生えたのです。
俺をコケにしやがって。見とけよ、アプロディーテー。絶対に見返してやる!
ヘーパイストスの復讐劇が始まる
ある日、ヘーパイストスはアフロディーテ―に
これから仕事場に行く。しばらく家に帰れない
と伝えました。
ヘーパイストスは炎と鍛冶の神と言われていて、彼は自分の工房を持っており、武器や道具、宝などを何でも作り出すことが出来たと言われています。
あら、そうなの。いってらっしゃい。(やった、浮気のチャンスだわ)
ヘーパイストスを見送ったアプロディーテーはこれ幸いとアレースを自宅に呼んで、浮気を楽しもうといました。
アレース、待ちきれないわ。今日はあの人は帰ってこないし、二人で楽しみましょう
そう言ってアプロディーテーとアレースは裸になってベッドに入ると、
な、なによ!これ!
なんとベッドがから見えない網が二人を捕らえ、裸の二人は完全に身動きがとれない状態になってしまいました。
ククッ、やっぱりこういうことか
無事に浮気現場を現行犯で捕まえたヘーパイストスは不敵に笑っていました。
浮気現場を見世物にするヘーパイストス
浮気現場は無事に抑えられたけど、どうやってこらしめてやろうか
そんなことを考えているヘーパイストスの前に幸運な(不運な?)ことに伝令の神であるヘルメースが通りました。
そうだ!ヘルメース、ちょっといいかい?
どうしたんだい
ヘーパイストスはヘルメースがアプロディーテーに片想いをしていることを知っていました。
彼にアプロディーテーの浮気現場を見せれば絶対に興味を持ってくれることを確信して、こう言います。
ちょっと、僕の家においでよ
何も知らないヘルメースがヘーパイストスの家の中に入るとびっくり。
そこにはベッドの上で裸同士で絡み合うアプロディーテーとアレースの姿があったからです。
これは…
ヘーパイストスの思った通り、ヘルメースは浮気現場に目が釘付けです。
そこで、ヘーパイストスはさらにヘルメースにこう言いました。
どうだい。他のオリュンポスの十二神をここに呼んでもらえないかな?特に僕とアプロディーテーの結婚の仲介をした僕の母上(ヘーラー)は絶対に呼んできて欲しいんだ
伝令の神であるヘルメースは
面白いものが見れる
という噂を流し、瞬く間にそれはオリンポス中を駆け巡り、十二神をヘーパイストスの前に連れてきました。
皆様、お集まりいただき光栄です。これから面白い見世物をご覧いただきましょう
ヘーパイストスはそう言うと、自分の妻の浮気現場を晒しものにしたのです。
これは…なんと…
集まった神々はあまりの様子に困った顔をしてしまいます。
本当を言うと、二人の様子が余りにも滑稽で面白いので、神々も大声で笑いたかったのですが、
- ここで笑ってしまうと品がないこと
- ヘーパイストスとアプロディーテーの結婚を取り仕切っていたヘーラーがいる手前
笑うことが出来ませんでした。
そんな十二神の神々の前でヘーパイストスはヘルメースにこう声をかけます。
ヘルメース、君は以前からアプロディーテーと寝どころを共にしたいと言っていたそうだけれど、丁度良い機会じゃないか。アレースと代わってもらったらどうだ?
ヘーパイストスの言葉にヘルメースはこう返します。
代わってもらいたいのは山々だけれど、私の一物はアレースの物と比べ、頑丈でもたくましくもございません
ヘルメースのド下ネタに我慢していた神々は思わず噴き出してしまいました。
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アレースはあまりの恥ずかしさに、解放された途端に逃げるように去っていきました。
しかし、アプロディーテーはただその場で微笑んでいました。(強い…)
そんな神々の笑い声が響く中、ヘーラーだけは笑えませんでした。
へーパイストはヘーラーにこう言いました。
母上、あなたより頂きました花嫁は、他の男と寝るようなふしだらな女です。この女をあなたに丁重にお返しします。どうぞお引き取り下さい
こうして神々の前で恥をかかされたヘーラーはアプロディーテーを連れ、神々が失笑する中退散しました。
この後、ポセイドーンの仲介の元、ヘーパイストスはアプロディーテーと離婚したそうです。
ちなみに、ギリシャ神話の絶対神ゼウスも浮気を果てしなく繰り返しています。
ゼウスの浮気を知りたい方はこちら。
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しかし、浮気は決して認められたものではなく、ゼウスが浮気した場合は正妻のヘーラーが凄まじいお仕置きをしますので、やっぱり浮気はいけないようです。
ヘーラーの壮大なお仕置きの記事はこちらです。
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皆さん、浮気はダメ、絶対。ですよ
アプロディーテー、人間に恋をする
ここでは神であるアプロディテーと人間であるアドーニスという青年の恋愛についてご紹介します。
美しい王女、ミュラー
物語の始まりはとある国の王女様の存在からです。
その国の王族は代々アプロディーテーを信仰していました。
しかし、王女ミュラーはとても美しく、
ミュラーの美しさはアプロディーテーを超えているだろう
と一族の中で言われるほどでした。
そして、これを聞いたアプロディーテーは大激怒。
私より美しい人間がいるだって?ふざけんじゃないわよ!…よーし、じゃあこのミュラーっていう娘が父親に恋をするように仕向けてやりましょう
こうしてミュラーはアプロディーテーによって自分の父親であるキニュラースを愛してしまうようになりました。
私、どうしましょう…。お父様が…好き…。でも、こんなの、いけないわ…
ミュラーはひどく思い悩みました。
そこで自分の乳母にだけ自分の気持ちを打ち明けました。
可哀そうなミュラー様。わたくしにお任せくださいませ
こうして乳母は祭りの夜、キニュラースとミュラーを引き合わせるようにしました。
顔を隠した女性がまさか自分の娘だとは知らないキニュラースはその女性と一夜を共にしてしまいます。
しかし、明かりの下で女性の顔を見たキニュラースは驚きました。
まさかミュラー!お前何をやっているんだ!
ミュラーの顔を見たキニュラースは怒り狂い、ミュラーを殺そうとします。
ミュラーはなんとか父親から逃げ出したのでした。
アドーニス、誕生
キニュラースより逃げたミュラーはアラビアにまでやってきました。
すると、ミュラーを哀れに思った神々はミュラーを木に変えました。
やがて、その木にイノシシがぶつかり、木が裂け、その中から生まれたのがアドーニスでした。
アドーニスはとてつもない美少年で、そのアドーニスに恋をしたのがアプロディーテーでした。
あら、可愛らしい赤ちゃんね。そうだ!ペルセポネ―に面倒みてもらいましょう!
アプロディーテーは赤ん坊のアドーニスを箱の中に入れると、冥界の神ハーデースの妻のペルセポネーに預けました。
そんなハーデースとペルセポネーの夫婦仲についてさらに詳しく知りたい方は、
冥界の王ハデスと冥界の女王ペルセポネの仲って実はいい?
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こちらの記事をお読み下さい。
よく分からないけれど、とりあえず分かったわ
謎の箱をアプロディーテーから引き受けた後、ペルセポネーは好奇心に勝てず、箱の中身を見てしまいました。
まぁ、なんて綺麗な赤ん坊なの!
なんとペルセポネーもアドーニスに恋をしてしまったのです。
こうして、アドーニスはしばらくペルセポネーによって養育されるようになりました。
アプロディーテーVSペルセポネー
アドーニスが少年に成長するとアプロディーテーが迎えにやってきました。
ペルセポネー今までありがとう。これからは私が彼を引き取るわ
しかし、ペルセポネーもすでにアドーニスに好意を持っていたので、渡したくありません。
嫌よ。彼はこれからも私と一緒に過ごすのよ
何言ってるのよ!
こうしてプロディーテーとペルセポネーは争いになり、ついには天界の裁判所に審判を委ねるまでに発展しました。
その結果、アドーニスは一年間の三分の一をアプロディーテーと過ごし、さらに三分の一をペルセポネーと過ごし、残りの三分の一はアドーニスの自由にさせるということになりました。
この残りの三分の一でアドーニスが一緒に過ごす相手に選んだのがアプロディーテーだったのです。
私が育てたのに、ありえないわ!
この結果にペルセポネーは大層不満だったようです。
ペルセポネーの嫉妬の向かう先
アドーニス、今日も狩りに行くの?
成長したアドーニスは狩りが大好きで、毎日狩りに熱中していました。
狩りは危険よ。もう止めて欲しいわ
そんな…!大丈夫だよ。アプロディーテーは心配しすぎだって
アプロディーテーは度々狩りを止めるようにアドーニスに進言していましたが、それは結局聞き入れられませんでした。
さて、自分よりもアプロディーテーが選ばれることに対して立腹していたペルセポネーが向かった先はアプロディーテーの恋人である軍神アレースでした。
アレースにペルセポネーはこう囁きます。
あんたの恋人はあなたを差し置いて、たかだか人間の男に今頃夢中になっているのよ
はぁ!?なんだって!
ペルセポネーの話に腹を立てたアレースはアドーニスが狩りをしているところに、猪に化けて彼を殺してしまいました。
アドーニス!うそ!いや…!
アプロディーテーはアドーニスの死を大層悲しみました。
やがて、アドーニスの流した血から、アネモネの花が咲いたとのことです。
以上が、アプロディーテーとアドーニスのお話です。
最後の死んだ人の血から花が咲くというお話はアポローンとヒュアキントスのお話にも見られます。
なんだその話?
と興味を持たれた方は、
ギリシャ神話「アポローン」の悲しい3つの恋愛エピソード!
ギリシャ神話のオリュンポス十二神にも選ばれている有名な神アポローン(アポロン)。そんな彼の恋愛話ってどんなもの?意外と悲恋が多い神様であったアポローン。この記事では、彼の悲しい恋愛エピソードをまとめてご紹介していますよ!
この記事をご覧いただけたらと思います!
ギリシャ神話を実は漫画で分かり易く読むことが出来ます!
あのオリエンタルラジオのあっちゃんこと「中田敦彦のYouTube大学」でも紹介された漫画です。
ギリシャ神話をイラストと共にざっと理解されたい方は、
こちらの漫画もぜひ読んでみて下さい。
参考:『アプロディーテー』
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