ギリシャ神話における愛の女神と言えばアプロディーテーですが、その息子のエロース(エロス)もまた恋心と性愛を司る神です。
ローマ神話においてはアモール(アモル)またはクピードと呼ばれ、このクピードが英語読みになるとキューピッドになったと言われていました。
このエロースですが、愛と性と美の女神であるアプロディーテーと軍神アレースの息子と言われています。
このアプロディーテーとアレースの恋については、
アフロディーテとは?生まれ方や恋愛についての逸話まとめ!
ギリシャ神話の愛と美と性の女神アフロディーテ―(アプロディーテ―)とは一体どのような女神だったのか?また、イケメン軍神アレースの浮気現場を目撃したブサイク夫ヘーパイストスが取った行動とは?恋多き女神と人間の男性との恋愛エピソードもご紹介!
どうぞこちらをご覧ください。
ここでは、アプロディーテーの息子であるエロースと人間との純愛ストーリーをご紹介させていただけたらと思います。
美しすぎるプシュケー
とある国の王女にプシュケーという娘がいました。
プシュケーは大層美しく、その美しさは美の女神であるアプロディーテーをも超えると言われるほどでした。
えっ何ちょっと、あの人間の女、調子のってない?私より美しいって人間たちから言われてるみたいだけど、ありえないでしょ。エロース、ちょっと懲らしめてやって
えっ、懲らしめるって母さん、どうしたらいいの?
あなたの弓矢を使って、あの女がブサイクな男に惚れるように仕向けるのよ!あなたなら簡単でしょ!
凄い!面白そうだね、母さん!さっそくやってみるよ!
悪戯好きなエロースはアプロディーテーの提案通りにプシュケーに向かって弓矢を放とうとしますが、誤って自分の足に弓矢を当ててしまいました。
プシュケー…好きだ!
途端にエロースはプシュケーへの愛の虜となってしまったのです。
魔人に化けるエロース
どうやったら僕のこの想いは果たされるのだろうか…
プシュケーに恋をしてしまったエロースはなんとかプシュケーを手に入れることが出来ないかと悩みます。
そうだ!一か八か、これをやってみよう!
エロースはそう思うと、魔人に化けてプシュケーの両親の前に現れました。
あなた達の娘であるプシュケーを山の頂上に置いて、娘を捧げなさい。そこにいる『全世界を飛び回り神々や冥府でさえも恐れる蝮(まむし)のような悪人』(ラテン文学ではおなじみの恋の表現らしいです)と結婚させるのです
魔人に化けたエロースがプシュケーの両親にそう言うと、プシュケーの両親はそれを承諾するしかありませんでした。
そして、多くの人に悲しまれながら、プシュケーは山に運ばれることになったのです。
エロース、プシュケーと同居する
風の神であるゼピュロスがこの世のものとは思えない素晴らしい宮殿にプシュケーを運び、宮殿の中では食事も音楽も何もかもが心地よく用意されていました。
エロースは姿がバレてはいけないと夜の寝床にのみ現れました。
プシュケーは宮殿での生活を楽しんでいましたが、やがて家族が恋しくなりました。
お願いです!私の家族に会わせてください!
それは…できない
ならせめて、私の姉を宮殿に招いてください。それくらいはいいでしょう?
…分かった
こうしてプシュケーはエロースに泣き落としで、姉を宮殿に招く許しを得たのです。
プシュケー、そそのかされる
プシュケーに招待されてやってきたプシュケーの姉二人は宮殿の様子を見てビックリします。
えっ、あんたこんな豪華な暮らししてるの!?
めちゃくちゃいいじゃない!私もこんな暮らししたいわ!
プシュケーの生活の様子を見た姉たちはプシュケーに嫉妬しました。
でも、本当にこんな上手い話があるかしら?
なんの不自由もなく暮らせるなんてきっと理由があるはずよ
理由って…、何かしら?
あんたが結婚したその姿を夜しか見せないその男は実は大蛇なのよ。きっとこの宮殿であんたをぶくぶく太らせて、それからあんたを食べるつもりだわ
えっ!
そうよ、そうに違いないわ。こんな良い話なんてないもの。そもそも夫が夜しか姿を見せないなんて怪しいに決まってるじゃない。あんた夫が寝ているうちにでも、そいつを殺しちゃいなさい。じゃないと、あんたが殺されるわよ
こうして姉たちにそそのかされたプシュケーはエロースを殺害することを決意するのです。
プシュケー、エロースを襲う
プシュケーは寝ているエロースを殺すべく、蝋燭を持って彼に近づきました。
そうして蝋燭の明かりによって照らされたエロースの姿をプシュケーは初めて見るのです。
なんて、美しい人なの…
プシュケーが照らした先にいたのは神々しい神の姿が照らし出されていたのです。
驚いたプシュケーは持っていた蝋燭の蝋を落としてエロースに火傷を負わせてしまいます。
何をしているんだ!
驚きながら起き上がったエロースはプシュケーの行った行動に怒り、そのままその場を飛び去りました。
アプロディーテーの激怒
一方、アプロディーテーは息子の醜聞に大激怒。
何あの娘!絶対に許さないわよ。こうなったら誰でもいいからあの娘を捕らえてちょうだい。捕まえてくれた人には…そうねぇ、私がキスしてあげるわ
こうしてアプロディーテーのキスという懸賞までかかったプシュケーの大捜索が始まりました。
あまりの事態に恐れたプシュケーはアレースに加護を求めますが、
いやぁ、アプロディーテーとは付き合いがあるからな、協力してやれることはねぇよ
と断られます。
アレースについて知りたい方はどうぞこちらをご覧ください。
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次にゼウスの正妻であるヘーラーに加護を求めますが、
逃亡している人を匿(かくま)ってはならないのよ
と法律を理由に断りました。
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プシュケーは観念して、アプロディーテーのもとに結局は出頭することになったのです。
アプロディーテーからの難題
こうしてアプロディーテーはプシュケーを捕まえると彼女に無理難題を押し付けました。
- 大量の穀物を選別させられる
- 凶暴な金の羊の毛を取ってくるように命じられる
- 竜の棲む泉から水を汲んでくるよう言われる
と様々なことをプシュケーに求めたのです。
一見すると不可能なことばかりですが、プシュケーは不思議な助けを受けて全てのアプロディーテーの難題を乗り越えていくのです。
業を煮やしたアプロディーテーは次の難題をプシュケーに伝えます。
冥界の女王であるペルセポネーのところに行って、美を分けてもらってくれない?あなたがエロースにつけた火傷の介抱をしていたら、私の美貌が少し衰えてしまったのよ
分かりました…
こうしてプシュケーはペルセポネーに会うために冥界へと向かいました。
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プシュケーは首尾よくペルセポネーから美を分けてもらいましたが、ペルセポネーからとある注意を受けます。
この美が入った箱は決して開けてはいけませんよ
こうしてプシュケーはアプロディーテーの元に戻ろうとしましたが、途中だんだんと不安になります。
もし私の容姿が醜くなったら、エロースはもう私を愛してくれないのではないかしら…
そんな不安にかられたプシュケーは遂に禁断の箱を開けてしまうのです。
箱の中には冥界の眠りが入っており、箱を開けたプシュケーはそのまま眠ってしまいました。
回復したエロース
火傷の傷から癒えたエロースはプシュケーから冥界の眠りを取り去ってそれを箱に集めました。
そして、ゼウスにプシュケーとの結婚のとりなしを頼みました。
もしお前が良い女を見つけたら絶対に紹介しろよ
とゼウスがエロースに言うと、ゼウスは酒の神ネクタールの酒をプシュケーに飲ませ、プシュケーを神々の仲間にしました。
これより、プシュケーは神となり、我々の仲間になった。つまりはエロースとは身分違いの結婚には当たらない
このゼウスの言葉にアプロディーテーも二人の結婚を遂に認めました。
こうしてエロースとプシュケーは結婚し、二人の間にはウォルプタース(喜び、悦楽の意)という名の子が生まれました。
禁断の箱
エロースとプシュケーのお話でも開けてはいけない禁断の箱というのが出てきましたが、ギリシャ神話における禁断の箱と言えば「パンドラの箱」です!
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いつの時代にも人間の好奇心が大きなことを引き起こすのかもしれませんね。
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