ヒンドゥー教の前の宗教のバラモン教は古代インドで重要と言えます。
今回はバラモン教の特徴をわかりやすくまとめてみました。
バラモン教とは?
バラモン教(Brahmanism)は、ヒンドゥー教の前身となったヴェーダを権威とする宗教を指します。
ヴェーダとは紀元前1000年頃から紀元前500年頃にかけてインドで編集された一連の宗教文書の総称です。
ヴェーダは「知識」の意味があり、バラモン教とヒンドゥー教の聖典です。
ヴェーダはシュルティ(天啓聖典)に属していて、古代のリシ(聖人)達によって神から受け取られたと言われています。
ヴェーダは口伝でのみ伝承されていた為、文字が使用されるようになっても文字にすることを避けられ、師から弟子へと伝えられてきました。
後になって文字に記されましたが、実際に文字に記されたのはごく一部とされています。
バラモンは正しくはブラーフマナと言いますが、音訳された漢語「婆羅門」の音読みから日本ではバラモンということが多いです。
バラモン教にインドの各種の民族宗教・民間信仰が加えられて、徐々に様々な人の手によって再構成されたのが現在のヒンドゥー教です。
しかし、ヒンドゥー教という言葉には、バラモン教を含む考えもあります。
ヒンドゥー教は広義ではインドにあり、かつてあったもの全てが含まれていてインドの歴史では先史文明のインダス文明まで遡るものまであります。
さらに、アーリア民族のインド定住以後から現代まで連続するインド的伝統を指します。
古代インドの人々がバラモン教と決めたわけではなく、
- 仏教以前に存在したバラモン中心の宗教をバラモン教
- バラモン教のヴェーダ時代の宗教思想をヴェーダの宗教(ヴェーダ教)
とイギリス人達がそれぞれそう呼んだのが由来です。
実はヒンドゥー教もヨーロッパ人によって付けられた名前です。
バラモンとは司祭階級のことを指します。
バラモンは祭祀を通じて神々と関わる特別な権限を持ち、宇宙の根本原理ブラフマンに近い存在とされ敬われています。
バラモン教は最高神を定めておらず、儀式ごとにその崇拝の対象となる神を最高神の位置に置きます。
バラモン教は必ずしもヒンドゥー教と等しいわけではありません。
たとえば、バラモン教の中心となる神は以下になります。
- インドラ:雷神 ・天候神・軍神・英雄神
- ヴァルナ:最高神
- アグニ:火神
一方、ヒンドゥー教ではバラモン教の中では脇役的な役割しかしていなかった以下の神様が重要とされています。
- ヴィシュヌ:ヴィシュヌ派では維持の神・最高神
- シヴァ:シヴァ派では世界の創造、維持、再生を司る最高神
ヒンドゥー教でもヴェーダを聖典としていますが、叙事詩(ギータ)『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』プラーナ文献などの神話が重要となっています。
カースト制度(四姓制)
バラモン教は階級制度である四姓(ししょう)制を持ちます。
一般に基本的な分類が4つあり、カーストは身分や職業を規定します。
- バラモン (司祭階級・最上位):ブラフマンと同様の力を持つと言われる
- クシャトリヤ(戦士・王族階級):王や貴族など武力や政治力を持つ
- ヴァイシャ(庶民階級):製造業に就ける
- シュードラ(奴隷階級):人が嫌って避ける職業にしか就けない
また、上記のカーストに収まらない人々はそれ以下の階級パンチャマ(不可触民)とされました。
カーストは親から受け継がれるので誕生後にカーストの変更はできません。
また、カーストの移動は不可能で異なるカースト間の結婚はできません。
ただし、現在の人生の結果によっては次の生で高いカーストに上がれるそうです。
現在のカーストは過去生の結果であるから、受け入れて人生のテーマを生きるべきだとされています。
1950年に制定されたインド憲法の17条により不可触民を意味する差別用語を禁止、カーストによる差別も禁止にしています。
それでも、現在でもカーストはヒンドゥー社会に深く根付いています。
バラモン教の教義とは?
神々への賛歌『ヴェーダ』を聖典とし、天・地・太陽・風・火などの自然神を崇拝し、司祭階級が行う祭式を中心とします。
そこでは人間がこの世で行った行為(業・カルマ)が原因となって、次の世の生まれ変わりの運命(輪廻)が決まります。
業(カルマ)とは、善または悪の業を作ると、因果の道理によってそれ相応の楽または苦の報い(果報)が生じるとされます。
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