「死海文書」はこれまでに発見された古代文書の中で、おそらく最も有名なものの一つです。
また、最も不可解な文書の一つでもあります。
誰が書いたのか、なぜ書いたのか?
そして、なぜ長い間隠されたままだったのでしょうか?
これらの興味深い文章は1946年から1956年にかけて、ユダヤ砂漠の数カ所で発見されました。
そのほとんどは旧約聖書のヘブライ語テキストで(新約聖書の書簡も少し含まれています)、紀元1世紀のものですが、紀元前3世紀にまでさかのぼる断片も含まれています。
しかし、誰がなぜ埋めたのか?
そして、今日の私たちはその発見について何を知っているのでしょうか?
死海文書の作者は誰?
死海文書の作者は何十年もの間、謎のままでした。
誰が書いたかは分かっていますが、誰がなぜ死海文書を埋めたのかは分かっていません。
しかし、それでも学者たちはその謎を解き明かそうと努力しています。
死海写本の作者についてはいくつかの説があり、それぞれに支持者と反対者がいます。
エッセネ派
最も広く受け入れられている説です。
この説によれば、死海周辺に住んでいたユダヤ人の禁欲的な宗派であるエッセネ派の人々によって書かれたものです。
エッセネ派は1世紀のユダヤではかなり一般的な共同体で、独身主義、菜食主義、共同生活など非常に厳しい生活をしていたことで知られています。
死海文書の専門家であり、イギリスの神学者、古代ユダヤ教の研究者であるジェイムス・H・チャールズワース氏は、
巻物自体には、エッセネ運動の創始者であるエッセネという名の人物など、エッセネ派として知られる人物の名前が記されている
と述べています。
エッセネ派が死海文書を書いたという説が本当であれば、確かに納得がいきます。
エッセネ派は死海周辺に住んでいた禁欲的な共同体で、多くの宗教的な文章を書いたことで知られています。
また、エッセネ派は当時のユダヤ教主流派と対立していたことが知られており、自分たちの書いたものを他の人々から隠すために、砂漠に隠すことを選んだのかもしれません。
サドカイ派
もう一つの説は、死海文書が書かれた当時、政治的な権力を握っていたサドカイ派というユダヤ人の宗派によって書かれたものだというものです。
サドカイ派はユダヤの祭司階級に属し、ローマ政府にも大きな影響力を持っていました。
また、他の宗教的な文書も書いたと考えられています。
例えば、モーセの十戒は当時のユダヤ教本派が書いたものとはかなり異なっています。
もしサドカイ派が死海文書を書いたという説が本当なら確かに納得がいきますね。
ローマ人
もう一つの説は、ローマ政府またはローマ政府に協力する人物が書いたというものです。
この説では、巻物はエッセネ派でもサドカイ派でもなく、ローマ人自身が書いたとされています。
この説はある意味、理にかなっています。
なぜなら、巻物には伝統的なユダヤ人の歴史観、宗教観とは相容れない情報が含まれているからです。
ローマ帝国にとっては、ユダヤ人が反論できないような新しい歴史や宗教を提示することで、ユダヤ人を支配するのに役立ったのでしょう。
死海写本は今どこにある?
死海写本はイスラエルの安全な施設に保管されています。
一般には公開されていませんので、直接見たい人はイスラエル政府の許可を得る必要があります。
死海写本がどのようなものかは、どの写本について話しているかによって異なります。
銅の巻物
1952年に死海近くの第3洞窟で発見された巻物です。
銅でできており、長い間砂漠にあったためか、古びた緑色で完全に覆われています。
そのため、この巻物は非常に壊れやすくなっています。
なので、現在は特別に温度調節された部屋に保管されています。
銀の巻物
1956年に第5洞窟で発見された巻物です。
その名の通り銀でできており、こちらも特別な部屋に保管されています。
死海文書には何が書かれている?
死海文書には、実際には何千もの異なるテキストが含まれています。
ここでは、その中でも特に翻訳が有名なものに焦点を当てます。
ビッグ3
- イザヤ書の大巻
- 詩篇の大巻
- 共同体の規則
が最も頻繁に出版・翻訳されている3大テキストです。
これらはいずれも紀元1世紀に書かれたもので、3〜4世紀に写本されたと考えられており、現存する最古の写本となります。
その他
死海文書には、これまであまり翻訳されてこなかったものも多くあります。
しかし、技術が向上するにつれて、これらの巻物はますます翻訳され、古代のユダヤ人の生活と宗教について新しく刺激的な洞察をもたらしています。
なぜ死海文書がそれほど重要?
死海文書が重要なのは、1世紀当時のユダヤの生活やユダヤ教の慣習を垣間見ることができるからです。
また、新約聖書の記述が書かれた時代の文脈に当てはめるのに役立つという点でも、重要です。
死海文書が書かれたのは、ユダヤ教が激動していた時代です。
ローマ帝国に征服され、ユダヤ教の中にもさまざまな思想家がいました。
ラビ派ユダヤ教とキリスト教が発展するまでの時期です。
死海文書があれば、この時代に何が起こっていたのか、なぜこのような展開になったのかを理解することができるのです。
これらのことから、死海文書がユダヤの歴史とキリスト教の起源を理解する上で、非常に貴重な資料となるのです。
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