「うちでのこづち」という伝説上のものは、日本の文化に根強い根を持っています。
昔話にも登場することのある宝物として知られていますが、その歴史はさらに深いところに遡ります。
今回はこのうちでのこづちの歴史や魅力に迫ります。
うちでのこづちとは?
打ち出の小槌(うちでのこづち)は、日本の伝説や昔話に登場する、振ることで様々なものが出てくるといわれる伝説上のハンマーです。
鬼の持つ宝物や、七福神の一柱(ひとはしら)である大黒天の持ち物とされ、富をもたらす象徴として描かれています。
打ち出の小槌は、願い事を唱えて振ると願いどおりの物が出てくる効果を持つといわれています。
かぶれば身を隠すことができるという「隠れ蓑(みの)」や「隠れ笠(がさ)」と並んで福を招く宝物とされています。
御伽草子
「一寸法師」という昔話には、鬼が打ち出の小槌を所持していて、一寸法師によって退治されたというエピソードがあります。
一寸法師が打ち出の小槌を使って体を大きくしたり、金銀を出したり、飯を出すなどの様々な効果を発揮しています。
一般的に流布している昔話でも、同様の使い方が描かれています。
日本大百科全書
打ち出の小槌は平安時代に仏教書『宝物集』に記されたところでは、宝物以外に牛や馬、食べ物や服などを思いのままに出現させることができます。
しかし、これらの出現したものは鐘の音が聞こえるとすぐに失われます。
つまり、現実に存在する宝物というものではないとされています。
大黒天の持ち物
打ち出の小槌は、大国主(おおくにぬし)の神と同一視されるようになった大黒天の持つものとされています。
そして、大黒天像は多くがハンマーである槌(つち)を持った姿で作られています。
ただ、どのような記述から大黒天が槌を持つ姿が作られたのかははっきりしていません。
うちでのこづちの昔話
打ち出の小槌は、日本の昔話や伝承に登場する鬼の所有する宝物の一つです。
鬼から異界を訪れた人物が贈り物としてもらい、願いを唱えて振ると願い通りの物が現れるとされています。
一方で、邪悪な思いを持った隣人が偽装して願いを唱えて振ると、違うものが現れて痛い目にあってしまうというエピソードもあります。
例えば、高知県高岡郡や鹿児島県長島町に伝わる昔話では、正直な人が龍宮から打ち出の小槌を贈られるという話があります。
また、『桃太郎』の物語においても、鬼ヶ島で手に入れた打ち出の小槌を使ってさまざまな宝物を出すという場面が描かれています。
平家物語のうちでのこづち
『平家物語』という古代の日本の文学作品の中に、「祇園女御(ぎおんのにょうご)」というエピソードがあります。
このエピソードでは、祇園女御が住んでいた近所で手には打ち出の小槌らしきものを持った鬼が出たという噂が立ったとされています。
ですが、実際は手に持った灯りを通すために仕事をしていた油つぎの法師だったと判明します。
このエピソードから打ち出の小槌を持った鬼が有名であったことがわかります。
保元物語のうちでのこづち
『保元物語』という作品にも、鬼が住んでいる場所から失われた宝物を聞き出すエピソードがあります。
そのようなエピソードから鬼たちが持っていた宝物に打ち出の小槌が加わっていたと推測されています。
一部の本の系統では「うちでの履(り)」という宝物の名があり、
「うちでのこづち」が誤記ではないか?
と見られています。
コメントを投稿