伝統的なヤクザ組織から独立した新しいタイプの犯罪組織の出現は、日本の闇社会を揺るがしている。
「半グレ」と呼ばれるこれらのグループは、組織的な犯罪組織の支配を逃れながら、違法な活動を行う強力な勢力となっている。
本稿では、半グレ集団の起源、種類、組織構造を明らかにし、その影響力の増大と法執行上の課題を明らかにする。
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半グレ現象の解明
「半グレ」という言葉は、日本の組織犯罪の権威であるジャーナリストの溝口敦氏によって広められた。
しかし、この言葉自体は溝口氏の著作以前から存在していたことに注目する必要がある。
彼の著書『ヤクザ崩壊』(2011年・講談社)では、溝口はこれらのグループの性質について洞察を示している。
彼は、彼らが法律を守る市民(「カタギ」)と本格的なヤクザ構成員の間のグレーゾーンを占めると表現し、それゆえ「半グレ」と呼ばれるようになった。
進化するパターンと特徴
犯罪学者の廣末登氏が指摘するように、半グレ集団の特徴は時代とともに変遷してきた。
当初、溝口氏が定義した「半グレ」とは、旧関東連合や怒羅権(ドラゴン)などの組織に深く関与していた30代から40代の人たちのことを指していた。
しかし、廣末氏は半グレを4つのパターンに分類している。
硬派な半グレ
旧関東連合や旧ドラゴンの古参メンバーで、溝口氏が半グレと認定した年齢層が多い。
不正行為者
オレオレ詐欺をはじめとする詐欺行為などを行う。
合法的な仕事を持つ半グレ集団
非合法な活動の傍ら、合法的な職業に就き、社会に溶け込んでいる半グレもいる。
元無法者
元暴走族や不良グループのメンバーで、半グレ集団に転身した者を指す。
半グレの構成と活動
半グレの構成は、不良行為に関連する暴走族の元メンバーであることが多い。
また、特殊詐欺や闇金融に関与しているとされるグループもあるが、その活動内容はほとんど記録されていないため、つかみどころのない存在である。
メディアは彼らを
元暴力団員やその知人によって形成された緩やかなネットワーク
(朝日新聞社、2013年)
と呼んでいる。
半グレ集団の中には、詐欺以外にも、貧困ビジネス、解体工事、廃棄物処理、クラブや芸能プロダクションの経営、さらにはインターネット上の出会い系サイトの運営など、さまざまな分野に進出する者もいる。
これらの活動は「シノギ」と呼ばれ、メンバーが収入を得るための手段となっている。
また、根強い噂によると、半グレ集団は屋根工事の詐欺や破壊などの詐欺行為で得た資金を、伝統的な犯罪組織に流しているとのこと。
しかし、これらの主張を裏付ける具体的な証拠はまだ見つかっていない。
半グレの特徴と課題
半グレ集団と従来のヤクザ組織との顕著な違いは、組織的な暴力団に正式加盟していないことである。
そのため、1991年に制定された暴力団対策法や、その後の組織犯罪撲滅を目的とした条例の適用を受けることがない。
そのため、半グレは比較的匿名で活動することができ、秘密が保たれ、法的な影響から逃れることができる。
半グレの活動に迫る
犯罪の世界では、「半グレ」と呼ばれる集団が、さまざまな詐欺行為を行っている。
その中でも特に悪質なのが、「詐欺」という特殊な手口だ。
屋根詐欺、マスクの隠匿、不正なスカウト行為、そして強盗まで、半グレの世界に迫る。
彼らの正体を暴くことで、認知度を高めると同時に、このような悪質な人物に対抗するための注意喚起を行うことができるだろう。
屋根の詐欺
屋根の葺き替え工事は、半グレの手口と酷似しており、詐欺の中でも特に深刻とされている。
屋根工事業者を装った悪徳業者たちは、巧妙な手口を使う。
屋根の無料点検を依頼し、被害がなければハンマーで破壊し、器物損壊を行うという悪質な手口だ。
さらに、契約時に被害者から法外な料金を請求することもあり、その額は信頼できる業者の相場の2倍にもなる。
例えば、20坪の物件で相場が50万円の場合、半グレは100万円という破格の金額を請求することもある。
たとえ家主が契約を断っても、半グレは屋根を破壊して社会への報復を実行する。
このような倫理観を無視した悪質な業者の摘発が急務となっている。
なお、床下点検の分野でも、同様の悪質な行為が報告されており、半グレ組織との関係が疑われている。
マスクの買いだめ
COVID-19のパンデミック(世界的大流行)の中で、半グレや暴力団は、マスクの需要の高さを利用した。
2020年1月の時点で、これらの人々は大規模な マスクの買い占めに着手していたことが報告されている。
入手したマスクは高値で転売され、在庫が少なくなると、海外のマフィアグループと連携してさらなる入手に走った。
この違法取引は、パニックと欠乏を永続させるだけでなく、世界的な健康危機から利益を得る半グレの冷酷な性格を示すものであった。
違法なスカウト
京都では、半グレの起業家が違法なスカウトで逮捕された。
彼らは、有名大学の男子学生が若い女性をナンパし、自分たちが経営するぼったくりバーに連れて行くというデート商法を行っていた。
そして、莫大な借金を抱えた女性たちに風俗店での勤務を要求した。
そして、女性たちの給料の一部を紹介料として受け取っていた。
「日本の大学はぬるいから、甘く見ていると損をする」などと書かれたマニュアルを作成し、自分たちの行為を正当化していた。
優越感に浸った男子学生たちは、こうした搾取的な仕事に身を投じ、半グレたちはその悪事から利益を得ることができた。
このような行為は、東京や東日本の他の地域でも報告されており、悪質な行為が広く行われていることがわかる。
半グレと暴力団の関係
半グレは、詐欺にとどまらず、さまざまな犯罪行為に関与している。
大阪の歓楽街で「軍団立志」と呼ばれる半グレ集団が暴行を伴う強盗事件を起こし、複数の被害者が暴行を受け、所持品を奪われた事件もある。
また、元組員宅を狙い撃ちし、貴重品を強奪するなどの活動も行っている。
また、金塊強奪事件の首謀者が「半グレのリーダー」と呼ばれる事件も発生した。
このような事例は、半グレが非合法な目的を達成するためには、どのような手段も厭わないということを痛感させるものである。
不正な取引への関与
明確な違法行為ではないものの、半グレは合成麻薬の不正取引など、道徳的に非難される行為に関与してきた。
2010年代初頭、闇金業者出身の半グレは、一般に「合法ハーブ」と呼ばれる合成カンナビノイドの流通に関与していた。
しかし、法執行機関がこれらの物質を取り締まるようになったため、半グレはこのビジネスから速やかに手を引いた。
だが、このような物質の販売に一時的に関与していたことは、疑わしい行為に手を染める意思を示すものであった。
さらに、半グレの中には、合法的なビジネスに従事したり、公的な役割を維持することを選ぶ者もいる。
例えば、「関東連合」の元メンバーは、芸能界で起業し、タレント事務所やIT系広告代理店を経営している。
また、松島クロスのようにAV業界に就職する者もいる。
このように、表向きは合法的な職業に就くことで、半グレは犯罪者であることを隠し、社会に溶け込もうとしている。
ソーシャルメディアでの存在感
半グレは、TwitterやInstagramなどのソーシャルメディアプラットフォームを活用し、自分たちの活動範囲を広げ、無防備な個人を誘惑することに余念がない。
カリスマ性のある人物像とユニークなコンテンツで多くのファンを獲得し、そのファンを操って犯罪行為に加担することもある。
彼らは、オンライン上の存在を利用して、女性を性産業に強制的に引き入れたり、違法な事業を推進したりするなどの活動を促進している。
半グレは、自分の顔を公開し、贅沢なライフスタイルを描くことを厭わないため、ネット上での影響力をさらに強め、他の人々を犯罪の網に引き込んでいる。
半グレ組織とヤクザの関係
半グレ組織の構成員の大半は、従来のヤクザ組織には属さないが、ヤクザ組織と共生関係を築き、収益の一部を貢物として提供することが多い。
このセクションでは、半グレ組織とヤクザの間の魅力的な力学を掘り下げ、彼らの相互作用、法執行機関への影響、および彼らの活動に対抗するために取られた措置に光を当てる。
複雑な同盟関係
大阪の悪名高いアビスのような半グレ組織は、伝統的なヤクザ構造の外側で活動しながら、相互に有益な同盟関係を維持するというユニークな特性を示している。
アビスの場合、ヤクザの名門である山口組に月30万円から50万円の貢ぎ物をしていた。
また、アウトセブン(O7)のような半グレ集団との抗争でも、ヤクザが介入することで解決が進み、平和が取り戻されることが多かった。
その結果、警察当局、特にヤクザ捜査を担当する大阪府警の捜査4課は監視を強化した。
これにより、2018年には多数の逮捕者が出て、アビスとアウトセブンの両社が解散した。
ヤクザが活用する半グレ組織
近年、ヤクザは新参者や下っ端を一人前の組員として正式に登録することを控え、その手法を変化させている。
近年、ヤクザは新参者や下っ端を正式な組員として登録せず、傘下の半グレ組織で活動させるようになった。
この戦略により、ヤクザは直接的な法的影響を避けながら、一定の支配力を維持することができる。
このような新たな傾向は、ヤクザの影響力を解体しようとする法執行機関にとって、大きな課題となる。
沖縄の半グレ組織
2016年、大阪の半グレ組織が相次いで沖縄の石垣島に活動を拡大した。
これらの団体は、強引な勧誘を行い、恐喝まがいの行為を行っていた。
ヤクザ組織である山口組は、沖縄の犯罪組織に対する影響力を活用し、彼らの進出を促進する役割を果たしたとされている。
しかし、沖縄県警はこれらの半グレ組織を厳しく監視し、最終的に2020年11月に解散に至った。
半グレ組織との戦い
警察庁は2013年、関東連合やドラゴンなど一部の半グレ組織を「準ヤクザ」団体に分類し、その実態や活動を調査・摘発することを目的とした。
準ヤクザとは、従来のヤクザに見られるような組織構造はないものの、常習的な暴力行為や違法行為を行っている構成員で構成された団体である。
この分類のきっかけとなったのは、2012年に東京で大きな話題となった「六本木クラブ殺人事件」だった。
2017年時点では、東京都内の8団体と、2017年と2018年に大阪府警が指定した2団体が準ヤクザ団体に認定されている。
大阪府警は、徹底した捜査により、ガールズバーを運営する半グレ組織「アビス」の関係者55名を、暴行罪や恐喝未遂罪などで逮捕・起訴することに成功した。
これらの措置により、最終的に同組織は解体されることになった。
法執行の取り組み強化
2023年頃、日本各地の警察機関が半グレ組織対策に特化した専門部隊を設置するようになった。
2022年12月、警視庁は、半グレ組織の取り締まりを促進するため、各部署から包括的に情報を収集・分析する特別対策本部を発足させた。
この組織横断的な取り組みは、法執行の効果を高め、起訴を成功させることを目的としている。
また、2023年1月には、福岡県警が全国で初めて、半グレ組織の取り締まりに特化した本部を設置した。
これは、半グレ集団を効果的に解体し、社会への影響を軽減するための専門的な対策の必要性が認識されるようになったことを示す積極的な措置である。
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