日本の伝統的な建築には、「土間」と呼ばれる独特の文化的な特徴があります。
土間とは、家の中にある床がない空間のことで、地面がむき出しになっていたり、「三和土(たたき)」と呼ばれる圧縮された土の床があったりします。
土間は、主に玄関や玄室の近くにあり、外履きのまま出入りすることができる空間です。
また、台所や作業場、床を汚すものの保管場所など、家庭内でさまざまな用途に使われます。
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土間と従来の床材との違い
土間は、木板などの従来の床材とは異なり、石や三和土、現代建築ではコンクリートなどの素材で仕上げられています。
床材にコンクリートを使用する場合は、「土間コンクリート」と呼ばれることが多いようです。
土間と従来の床材は区別されていますが、文脈によっては土間と床材の境界が曖昧になることがあることに注意が必要です。
例えば、中国の少数民族である土家族(とうちゃぞく)の住居や、ミクロネシアのポンペイ島の村の集会所には、履物を履いたまま出入りできるスペースがあり、土間と伝統的なフローリングの両方に似ています。
しかし、日本の土間は靴を脱いで入るという文化的習慣があることが大きな違いです。
中間的なスタイルと地域的なバリエーション
土間と伝統的なフローリングの両方の要素を併せ持つ中間的なスタイルもあります。
例えばインドネシアでは、土間の上に板を敷いて寝床とする文化があります。
また、日本の東北地方では、土間の一部に5cm程度の厚さのおがくずや藁を敷いて、居心地の良い座敷を作ることも珍しくありません。
なお、ヨーロッパの家庭では、床材は石やコンクリートが主流で、日本建築のように土間と伝統的な床材が明確に区別されることはないようです。
建築での 「国内空間」の伝統を探る
日本建築は、そのユニークなデザインと文化的意義で知られています。
その中でも、「土間」と「板敷き」は、それぞれ用途が異なりますが、伝統的な住環境に欠かせない空間であることが特徴です。
ここでは、これらの空間の特徴や歴史的意義について掘り下げます。
土間と板敷きを知る
土間は、古くから日本の住まいに欠かせないものでした。
日本の家庭では、室内では靴を脱ぐ習慣があります。
しかし、土間では靴を履いたままでも大丈夫です。
これは、板敷きの上に乗るときは靴を脱ぐという習慣からきています。
このように、板敷きのある生活空間と、土間のある実用的な空間が明確に分かれているのです。
日本の住まいの原点
日本の住宅は、北方から伝わったとされる竪穴式住居と南方から伝わった高床式住居の2つの建築様式から発展してきました。
縄文時代にはこれらの様式が共存し、その結果、土間と板敷きの組み合わせが独特の建築様式として誕生しました。
しかし、日本の住居は板敷きを中心とした生活様式に移行し、その結果、土間の重要性は著しく低下しました。
しかし、土間は完全に廃れたわけではなく、文化的、実用的な意義を持っています。
土間のさまざまな用途
日本家屋の伝統的な土間は、歴史上さまざまな用途に使われてきました。
ここでは、土間のさまざまな用途と、建築的な文脈におけるその意義について紹介します。
町家の土間
伝統的な町家では、土間は主要な通路に隣接して設置されるのが一般的でした。
このように土間を設けることで、靴を脱がずに店内に入ることができ、快適に買い物ができるようになりました。
農家における土間
農家では、農作業の後の食事や農作物の乾燥、わらじを編むなど、さまざまな用途で土間が使われていました。
仕事場としての土間
土間は作業スペースとしても利用され、特に悪天候時の農具や漁具の整備・修理に使われました。
数畳から数十畳の広さがあり、すのこに座ったり、裸足で立って作業したりと、多目的に利用されました。
掃除がしやすいという特性から、土や埃を扱う作業にも適していたと思われます。
生活空間と仕事場が明確に分かれていない古い日本家屋では、土間は多目的なスペースとして機能しました。
また、板を取り外し可能な専用スペースが設けられ、用途に応じて板敷きや土間として利用されることもありました。
台所としての土間
火や水を使うキッチンは、丈夫で耐火性の高い土間に置かれるのが当然でした。
また、囲炉裏などの調理器具を設置する際にも、他の床材に比べ、土間は設置しやすいという利点がありました。
これは利便性だけでなく、火災時の安全性にも配慮した選択でした。
そのため、伝統的な家屋では、土間に台所があるのが一般的であります。
地域によっては、このようなキッチンスペースを「釜屋(かまや)」と呼ぶこともあります。
軍艦島集合住宅の土間
長崎県にある軍艦島は、住宅が密集していることで知られている島です。
近代的な開発でありながら、過渡期の面影を残す建物もあります。
中には、玄関に組み込まれた広々とした土間のようなスペースがあるものもあります。
また、高層建築でありながら、地上階との高低差が大きく、過渡期の建築様式を彷彿とさせる建物もあります。
これは、これらの建築物が建てられた歴史的背景を反映したものです。
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