しばしば「ゴミ屋敷」と呼ばれる「溜め込み屋敷」は、今日の社会で懸念が高まっている。
このような家の特徴は、過剰な量のゴミや散乱物が蓄積され、無秩序な状態で放置されていることである。
溜め込み行動は強迫性障害(OCD)の現れとも言えるが、全ての溜め込み症患者がOCDであるわけではないことに注意することが重要である。
この記事では、この複雑な問題に光を当てながら、ため込む家の原因、影響、考えられる解決策を探っていく。
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ゴミ屋敷とは?
ゴミ屋敷とは、主に住宅で、ゴミが無秩序に積み上げられ放置されている建物のことである。
公的なゴミ収集場所ではなく、私有地や土地にゴミを溜め込んでいる。
ため込む人は、自分でごみを集めたり、近くの集積所からごみを運んだり、リサイクル活動に参加してごみを溜め込んだりする。
精神医学的には、溜め込み行動は強迫性障害(OCD)の1つのサブタイプである「強迫性溜め込み」に分類される。
この状態は、物を過剰に取得し、それらを捨てることができず、乱雑な生活環境をもたらすことを特徴とする。
2013年、米国精神医学会はDSM-5において、ため込み症を明確な精神疾患として正式に認定した。
溜め込み家屋は、悪臭の発生、ネズミや昆虫などの害虫の誘引、放火などの犯罪への脆弱性の増加など、様々な問題を引き起こす。
このような問題から、溜め込み屋敷は脚光を浴び、社会問題として広くメディアに取り上げられ、議論されるようになった。
ゴミ屋敷の社会的影響
ゴミ屋敷は、地域社会や個人への悪影響から社会問題として注目されている。
以下は、広く報告されている一般的な状況であるが、ゴミ屋敷はその状況によって大きく異なるので注意が必要である。
一般的な状況
ゴミ屋敷を作る人の多くは、所有者自身である。
場合によっては、近隣に複数の不動産を所有する資産家であることもある。
多くの場合、ため込む人は高齢者であり、未婚、別居、寡婦、あるいは単に社会的に孤立しているために一人暮らしをしている。
このような社会的孤立は、ゴミ屋敷が形成される一因と考えられている。
一旦ゴミ屋敷が形成されると、住人が自力で片付けることが難しくなり、事態の悪化につながる。
法的には、ゴミ屋敷であることが第三者から見て明らかであっても、所有者がゴミ屋敷であることを否定している場合には、第三者が介入して強制的にゴミを撤去することは困難である。
また、個人所有の物件であれば、無断侵入が不法侵入などの犯罪に該当する可能性もあり、問題解決はさらに難しくなる。
さらに、空き家や長期間放置された物件というケースもある。
このような場合、近隣住民がゴミの不法投棄を繰り返し、現所有者が対策を講じないことがある。
ゴミ屋敷の所有者が直接の原因ではなく、近隣住民のモラルの欠如や不法行為に問題がある。
ゴミ屋敷の認知度
環境省が2018年4月から2022年9月にかけて実施した調査によると、1741市区町村のうち101市区町村(38.0%)が計5224件のゴミ屋敷を認知した。
このうち2588件(49.5%)が解決済みで、残り2636件(50.5%)は未解決のままだった。
認知件数は東京都が880件で最も多く、愛知県538件、千葉県341件と続いた。
解決した症例のうち、改善率が最も高かったのは広島で74.6%、次いで愛知の72.9%だった。
改善率の要因としては、居住者への助言・指導、居住者の転居・死亡、関係部署・団体の包括的支援などが挙げられている。
ゴミ屋敷の背景を知る
ゴミ屋敷には様々な原因が潜んでいる可能性があり、その現象を一般化することは難しい。
しかし、報告されている事例から、以下のような理由が、しばしばゴミ屋敷の発生に関連している。
なお、多くの溜め込み症の人は、自分の状況の深刻さに気づいていない可能性がある。
異常行動としての強迫的ホーディング
- 自分の敷地内にゴミを不法投棄することへの怒り
- 地域社会や親族に対する不信感から、個人の安全や所有物に対する不安につながる
- さまざまな物を集めることで達成感を得る
- 品物を処分することに罪悪感を感じる
- 地域社会からの社会的排除と孤立
- 収集行動が病的にエスカレートする
その他、家に溜め込む理由には以下のようなものがある。
溜め込み障害
溜め込み障害は、しばしばゴミ屋敷の根本的な原因として特定される。
これは、実際の価値にかかわらず、所有物を捨てることが持続的に困難であることを特徴とし、生活空間の機能を損なう圧倒的な物品の蓄積につながる。
溜め込み障害は通常、成人期早期に現れ、年齢とともに徐々に悪化するが、人口の2~6%が発症していると推定されている。
地方自治体の取り組み
地方自治体は、さまざまな手段でゴミ屋敷問題に取り組んできた。
一部の自治体では、ごみ溜め行為やごみの蓄積に対処するための具体的な条例を制定している。
しかし、行政措置によって実際にゴミの撤去を強制している自治体はほとんどない。
2008年、静岡県三島市は、高齢の女性居住者の安全と幸福を懸念して、ゴミ屋敷事件に介入した。
高齢者虐待防止法を発動して対応した。
大分県別府市では、所有者のいない家屋や長期間放置された物件が、近隣住民によるゴミの不法投棄の標的になっている。
このような場合、ゴミをため込んだ家の所有者というよりも、一部の個人のモラルの欠如や不法行為が原因となっている。
東京都の杉並区、大田区、荒川区などでは、ゴミ屋敷の所有者にゴミの強制撤去費用を負担させる条例を制定している自治体もある。
また、東京都足立区では、強制撤去費用を負担できないゴミ屋敷の所有者に対して、100万円を上限として区が費用を負担する新たな条例を検討している。
特筆すべきは、自治体によるゴミ撤去の金銭的援助は全国的に珍しいということだ。
毎日新聞が2016年10月に実施した調査によると、指定都市、県庁所在地、東京23特別区の74市区のうち、具体的な条例を制定しているのは16%に過ぎない。
専門家は、高齢者だけでなく誰にでも起こりうることであり、自治体だけに責任を負わせるのではなく、日本政府が対策を講じるべきだと主張している。
強制撤去
京都市では2015年11月、「京都市劣悪な住環境を解消するための支援及び措置に関する条例」に基づき、民有地からのゴミの強制撤去が初めて行われた。
同市は、50代男性の所有地の前に積み上げられたゴミの撤去を行政代執行した。
民有地からのゴミの強制撤去は全国初の事例となった。
過剰なゴミが通路の妨げとなり、住民や緊急対応者の安全を脅かす可能性があるとの懸念から、このような決定が下された。
結論
ゴミ屋敷は、個人や地域社会に大きな影響を与える複雑な社会問題である。
この問題に対処するためには、根本的な原因を理解し、効果的な解決策を実施することが極めて重要である。
意識の向上、自治体からの支援、そして溜め込み障害への理解を深めることで、誰にとっても安全で健康的な住環境の実現に向けて取り組むことができる。
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