陰陽師という言葉は、日本で古代から中世にかけて活動した占術師を指す用語である。
彼らは陰陽道と呼ばれる技術を用いて、天文学や暦の知識を基に、日時や方角、人事全般の吉凶を占った。
また、呪術や祈祷なども行い、疫病や災害の除去、国家や貴族の安寧などを祈願した。
陰陽師は中国から伝来した陰陽五行思想を日本の風土や神道に適合させて発展させたが、その起源や系譜については諸説ある。
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陰陽師とは何か?
陰陽師とは、古代中国の陰陽五行思想に基づいて、天地の気を読み解き、占いや呪術を行う者のことだ。
日本では平安時代に渡来し、朝廷や貴族の間で重用された。
陰陽師は、災厄や疫病の原因を探り、祈祷や祓いで除去する役割を担っていた。
また、方位や暦などの吉凶を判断し、吉日や吉方を選んだり、建築や儀式などに関与したりもした。
陰陽師は、天文・地理・暦学・占星術・易占などの多岐にわたる知識と技術を持ち、その秘伝は代々受け継がれた。
陰陽師の起源と歴史
陰陽師の起源は中国にある。
中国では古代から陰陽五行思想が発達し、天文・暦・占いなどに応用された。
漢代には太史令という官職が設置され、天文・暦・占いを担当した。
後漢末期には董仲舒が五行説を儒教と結びつけて政治理論とした。
魏晋南北朝時代には道教が成立し、陰陽五行思想と結びついて祈祷・呪術などを行うようになった。
隋唐時代には道教の影響を受けた方士という呪術師が活躍した。
日本では飛鳥時代に中国から陰陽五行思想や暦法が伝来した。
奈良時代には天文博士や暦博士という官職が設置され、天文・暦・占いを担当した。
平安時代には道教の影響を受けた呪術が流行し、天台宗や真言宗の僧侶も祈祷・呪術を行った。
この時期に安倍晴明が登場し、朝廷や貴族の依頼で様々な祈祷・呪術を行った。
安倍晴明は自らを「陰陽師」と称し、後世に大きな影響を与えた。
安倍晴明の子孫である安倍氏やその分家である賀茂氏などが朝廷の陰陽寮に仕えるようになり、陰陽師の家系として繁栄した。
中世に入ると、安倍氏や賀茂氏以外の者も陰陽師を名乗るようになった。
特に土御門家は鎌倉幕府や室町幕府の下で重用され、幕府の公式行事や将軍家の祈祷・呪術などを担当した。
土御門家は多くの分家や門人を生み出し、日本各地に広まった。
また、土御門家以外にも山科言継や北野天満宮社人などが有名な陰陽師として活躍した。
近世に入ると、江戸幕府もまた土御門家を重用し、幕府の公式行事や将軍家の祈祷・呪術などを担当させた。
しかし、江戸時代後期には西洋の天文学や暦法が伝来し、日本の伝統的な天文・暦・占いが否定されるようになった。
明治維新後には陰陽道は廃止され、陰陽師の役職や家格も失われた。
現代では陰陽師は歴史的な存在として語られることが多いが、一部の者は陰陽道の伝統を受け継いで祈祷・呪術などを行っているという。
陰陽師の技術と知識
陰陽師は、天文・暦・占い・祈祷・呪術などの技術と知識を持っていた。
これらの技術と知識は、陰陽五行思想に基づいて、宇宙や自然や人間の運命を理解し、調和させることを目的としていた。
天文と暦
天文と暦は、天体の運行や季節の変化を観測し、記録し、予測することである。
天文と暦は、日時や方角によって吉凶が変わると考えられていたので、占いや祈祷・呪術にも重要な要素であった。
天文と暦に関する書物には『開元暦』や『大明暦』などがある。
占い
占いは、天文・暦・方位などの条件や、動物・植物・人間などの現象や、九星・六壬・奇門などの占法によって、未来や隠れた事柄を推測することである。
占いは、自分や他人の運命や相性を知り、吉凶を避けるために行われた。
占いに関する書物には『易経』や『奇門遁甲』などがある。
祈祷と呪術
祈祷と呪術は、神仏や霊魂に対して願い事をするか、呪文や符や儀式などを用いて影響を与えることである。
祈祷と呪術は、病気や災厄の除去や防止、恋愛や金運などの願望成就、敵対者への攻撃や妨害などの目的で行われた。
祈祷と呪術に関する書物には『道教経典』や『密教経典』などがある。
陰陽師の代表的な人物
陰陽師といえば、平安時代に活躍した安倍晴明が有名だ。
安倍晴明は、中国の陰陽道に加えて、日本独自の神道や山岳信仰なども取り入れた独自の陰陽道を確立した。
彼は、天皇や摂関家などの高貴な人々から重用され、多くの伝説や逸話が残されている。
例えば、彼は自分の家に四神相応の方位石を置いて鎮守したり、都に災いをもたらす鵺(ぬえ)を退治したりしたと言われている。
安倍晴明は、後世に多くの文学作品や漫画・アニメ・ゲームなどの創作物の主人公や登場人物として描かれている。
他にも、平安時代には安倍晴明の師匠とされる賀茂保憲(かものやすのり)や、安倍晴明の子孫とされる安倍有益(あべのゆうえき)などが知られている。
また、江戸時代には、徳川幕府に仕えた天海(てんかい)や彼の弟子である安井算哲(あんざいさんてつ)などが活躍した。
これらの人物も、様々な創作物に登場している。
陰陽師を題材とした作品
陰陽師は、日本文化において非常に魅力的な題材となっており、多くの作品が生み出されている。
ここでは、代表的なものをいくつか紹介する。
『夢幻泡影』(むげんほうよう)
京極夏彦(きょうごくなつひこ)による小説シリーズ。
平安時代末期に活躍した陰陽師・安倍晴明とその助手・光源氏物語(げんじものがたり)に登場する式部卿(しきぶきょう)をモデルにした博雅(ひろあきら)が、都で起こる怪異事件を解決していく物語。
歴史的事実や史料に基づいた描写と、創作上の要素が巧みに組み合わされている。
『陰陽師』(おんみょうじ)
夢枕獏(ゆめまくらばく)による小説シリーズ。
平安時代中期に活躍した陰陽師・安倍晴明とその友人である陰陽師・源博雅(みなもとのひろあきら)が、妖怪や悪霊などの超常的な存在と戦う物語。
ファンタジー色が強く、安倍晴明や源博雅の他にも、歴史上の人物や架空の人物が登場する。
映画やアニメなどにもなっている。
『ぬらりひょんの孫』(ぬらりひょんのまご)
椎橋寛(しいはしひろし)による漫画・アニメ作品。
現代の日本に住む中学生・八雲立夏(やくもりっか)は、自分が妖怪の総大将・ぬらりひょんの孫であることを知り、妖怪たちとの関わりを深めていく物語。
ぬらりひょんは、安倍晴明と因縁があるという設定で、安倍晴明やその子孫も登場する。
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